ストレリツォフ氏は、バイデン政権の下での日米関係は、日本にとってよりやりやすいものになるだろうと指摘する。「トランプ大統領時代は、“アメリカ・ファースト”―つまり自国第一主義が最大に優先されてきました。トランプ大統領は両国の経済協力における貿易不均衡に不満を表し、日本製自動車の関税の引き上げなどを求めていました。しかし、新たな大統領が政権に就けば、トランプ大統領の保守主義は過去のものとなるでしょう。この米国の戦略は矛盾した形で、日本と中国を接近させました。というのも、日本と中国は、自由貿易の規則に関し、共通した立場を占めているからです。保守主義に反対していることも同様です。中国は日本の主要な貿易相手国となりました。おそらくバイデン政権の下でこうした要素は目立たなくなり、米国と日本の貿易関係の拡大を促すことになるでしょう」。
またストレリツォフ氏は、バイデン氏が大統領に就任すれば任期中の4年の間に、米国政府は、中国との貿易戦争の緊張を緩和し、アジアにおける統合プロジェクトの復活を目指すことになるだろうと指摘する。「米国が環太平洋パートナーシップ協定に復帰するかどうかは確信が持てませんが、バイデン政権の下では、中国を突き放さぬよう、それと同様の提案がなされるでしょう。また米国は中国を協力関係に引き込もうとするのではないでしょうか。米国はあらゆる分野において(地域の軍事力強化を含め)、中国に対抗することが難しくなってくるからです」。
米国と中国の戦略的競争は今後も続いていくだろう。しかし、その競争は可能な限り、穏やかなものになるとみられる。中国に対して米国がより慎重な政策を取ることにより、両国間の対立は弱まり、アジア太平洋地域全体の緊張度も緩和し、それにより日米関係、日中関係にも利益がもたらされることになるだろう。