ロシア連邦検察委員会のスベトラーナ・ペトレンコ報道官は29日、連邦刑法第159条(高額の詐欺行為)によりワリヌイ氏に対する立件手続きを開始したことを明らかにした。検察はナワリヌイ氏と同氏の関係者らが多額の寄付金を不正に横領したことを示す証拠が十分に集まったとしている。
検察によると、ナワリヌイ氏は自身が主宰する反汚職基金の活動資金として5億8800万ルーブル(日本円でおよそ9億2500万円)を様々な法人から集め、そのうち3億5600万ルーブルを個人的な目的で使用したとしている。
一連の横領容疑によりナワリヌイ氏には最大で懲役10年に加え、100万ルーブルの罰金刑が課される可能性がある。
ナワリヌイ氏の中毒
ナワリヌイ氏は8月20日、トムスク(ロシア・シベリア西部)から飛行機での移動中に体調を崩し、同国中南部オムスク市の病院に入院した。検査の結果、ナワリヌイ氏の血液と尿からは毒物は検出されなかった。ナワリヌイ氏はその後、ドイツの病院に移送された。ドイツ政府は軍医の報告を引用し、ナワリヌイ氏には化学戦で用いる「ノビチョク」と同じグループの毒物が使用されたと発表した。
事件を受けて欧州連合(EU)は10月、ナワリヌイ氏の中毒事件をめぐりロシア高官などに制裁を発動した。制裁対象となったのは、ロシア大統領府のセルゲイ・キリエンコ第1副長官やロシア連邦保安庁のアレクサンドル・ボルトニコフ長官、ソ連時代に神経剤「ノビチョク」を開発した有機化学技術研究所など、ロシアの7個人・団体。
なお、ロシア政府は事件への関与を否定している。