なぜ、同様の研究において、このように矛盾した結果が出たのか?
心理学者らはゲームが登場したときから、この問題の答えを探し続けているが、ビデオゲームの市場が驚異的な成長を見せている現在、この問題はとくに深刻なものとなっている。Newzooの研究によれば、世界におけるビデオゲームの市場は2020年に20%拡大し、1,750億ドル(およそ18兆1,430億円)に達した。
2020年12月、米国ブリガムヤング大学の研究者グループが、2009年から10年間にわたって行った実験の結果を発表した。実験には13歳の子ども500人が参加した。
参加した子どもたちには、10年にわたり毎年、暴力的な行動、鬱的な症状、不安障害が現れるようになったかどうかに関するアンケートを行った。また毎年、被験者らが主にどのようなゲームを利用していたかについても調査した。その調査では、4%の参加者が非常に暴力的なゲームばかりしていたと答え、23%がときどき暴力的なゲームをする、そして73%がそれ以外のゲームを好むと答えた。
実験では、この3グループの結果に差異は認められなかった。さらに、時間の経過とともに、暴力的なゲームをしたいという欲求はまったく減少したと研究者グループは結論づけている。
一方これに対し、中国の専門家は暴力的なゲームは、未成年には抑制することができないようなネガティブな感情を強化するだけだとの見解を示している。
ロシアの専門家で、モスクワ心理教育大学、社会心理学理論学科で教鞭をとるニキータ・コチェトコフ助教授も、タオ氏の意見に同意する。
「人間性が確立され始めたばかりの頃のこうした影響は非常に大きいものです。ゲームは、成人にはそれほど影響は与えませんが、発達段階にある人間への影響は計り知れません。もちろん、青少年はバーチャルな世界ではなく、周囲の人間からの悪影響も受けやすいのです」。
同様の研究において、まったく反対の結果が得られるというのは珍しいことではない。たとえば、ドイツの研究者グループは2010年にゲームと行動には何の因果関係もないとの研究結果を発表したが、同じ年、米国と日本の研究者らは正反対の結果を導き出した。
これに関連し、タオ氏は中国で行われた実験について次のように述べている。
「わたしたちの研究では、中国で起きた未成年者の犯罪のうち、およそ71%がビデオゲームとなんらかの因果関係があることがわかっています。この割合は非常に大きなものだと考えます。わたしたちの研究の結果は、ビデオゲームが、青少年の暴力への依存傾向を刺激する可能性があるというもので、先述の米国の研究とは異なっています」。
暴力的なシーンを多く含むビデオゲームには国際組織も反対している。2018年6月、世界保健機関(WHO)はゲーム依存を病気として認定すると発表した。この分類が正式に採用されるのは2022年になるが、この問題に関する議論はすでに白熱化している。
ニキータ・コチェトコフ助教授は、スプートニクに対し、こうした研究の結果は一義的なものではないと指摘する。
英国のガーディアン紙が伝えるところによれば、2020年7月に雑誌「ロイヤル・ソサエティ・オープン・サイエンス」が、ゲームが心理に及ぼす影響に関する分析記事を掲載した。それによれば、ニュージーランド、マッセー大学の研究者が、ゲームと暴力性との間に直接的な関係があるかどうかを調査した過去の28の研究を分析し、長時間のビデオゲームの利用が人間の攻撃性に与える影響はほぼゼロであるとの結果を導き出した。
一方で、ゲームと人間の心理との相関性は、他の形でも現れている。たとえば、2018年にニューサウスウェルズ大学で行われた研究では、暴力的なビデオゲームをよく利用している人は、暴力的なシーンへの反応が薄いことが分かった。
一方、AP通信によれば、2020年11月、オックスフォード大学は、コロナ禍において、ゲームが人間の精神衛生状態に肯定的な影響があるとする研究結果を発表している。