反汚職基金の主宰者で、ロシアの野党指導者として知られるアレクセイ・ナワリヌイ氏は現地時間で17日夜、治療先のドイツから帰国し、モスクワのシェレメチェボ国際空港に到着して間もなく当局に拘束された。
この事態を受けて米国のサリバン次期大統領補佐官はツイッターへの投稿でナワリヌイ氏の速やかな釈放を要請した。
ナワリヌイ氏を速やかに釈放し、同氏に対して恐ろしい攻撃計画を実行に移した犯人らの責任を問う必要がある。ロシア政府がナワリヌイ氏に対して行う攻撃は人権侵害であるだけでなく、発言を望むロシア国民に対する非礼でもある。
これに対し、ロシア外務省のザハロワ報道官はツイッターにコメントを発表し、国際法の順守を呼びかけた。
サリバン氏(加えて、事前に用意済みのコメントを発表した多くの外国の活動家も同様)に伝えたいことことがある。国際法を順守し、主権国家の司法を侵害せず、自国の問題に取り組まれるがよい。
ナワリヌイ氏の拘束を受けて、これまで欧州理事会のシャルル・ミシェル議長に加え、リトアニア、ラトビア、エストニア、デンマーク、オーストリアの外相らが同氏を釈放するようロシア政府に要請した。加えて、ポーランドのマテウシュ・モラヴィエツキ首相はナワリヌイ氏の拘束を踏まえ、EU側から行動を起こす必要性を指摘した。今後、欧州理事会ではナワリヌイ氏の拘束を受けた対応について検討が進められる見通し。
ナワリヌイ氏は先にロシアへ帰国するとのメッセージをYouTubeチャンネル上で発表していた。これに対し、ロシア連邦刑執行庁は同氏の帰国後、速やかに拘束するとしていた。
ナワリヌイ氏はこれまで2度の横領容疑で執行猶予付きの有罪判決を受けていた。加えて12月末には新たな横領容疑が発覚したことを受けてロシア連邦検察委員会はナワリヌイ氏を再び起訴していた。
ナワリヌイ氏の中毒
ナワリヌイ氏は8月20日、トムスク(ロシア・シベリア西部)から飛行機での移動中に体調を崩し、同国中南部オムスク市の病院に入院した。検査の結果、ナワリヌイ氏の血液と尿からは毒物は検出されなかった。ナワリヌイ氏はその後、ドイツの病院に移送された。ドイツ政府は軍医の報告を引用し、ナワリヌイ氏には化学戦で用いる「ノビチョク」と同じグループの毒物が使用されたと発表した。
事件を受けて欧州連合(EU)は10月、ナワリヌイ氏の中毒事件をめぐりロシア高官などに制裁を発動した。制裁対象となったのは、ロシア大統領府のセルゲイ・キリエンコ第1副長官やロシア連邦保安庁のアレクサンドル・ボルトニコフ長官、ソ連時代に神経剤「ノビチョク」を開発した有機化学技術研究所など、ロシアの7個人・団体。
なお、ロシア政府は事件への関与を否定している。