今回、主要な発見となったのはスプートニクⅤの免疫原性。被験者のうち1万4964人に他の被験者の1.3~1.5倍多い抗体が形成された。試験では大規模な治験で要求されるように、この他の4902人にはプラセボが与えられている。
安全性に関しては、独立のデータのモニタリング委員会が、接種後の全ての副作用の94%がインフルエンザに似た症状や頭痛と軽度のものであることを確認しており、重い副作用やアレルギー反応は一切見られていない。
ロシア直接投資基金のキリル・ドミトリエフ代表取締役はランセット誌の記事を以下のように評価している。
「ランセットの公開したデータは、スプートニクⅤが世界で初めて承認されたCOVID-19ワクチンであるだけでなく、世界最良のワクチンに数えられることを証明しています。ランセットが公開した、独立の専門家らによるデータによれば、スプートニクⅤは世界で90%以上の有効性を持つ3種のワクチンに数えられ、COVID-19の重症化を完全に防ぎます。スプートニクⅤは安全性、保存温度が+2度から+8度という輸送の簡易性、手頃な価格である点で同種のワクチンを凌駕しています。スプートニクⅤは全人類のためのワクチンなのです。」
今、権威的な医学誌にワクチン治験の第3フェーズの結果を公表している開発者は、ガマレヤ研究所を含めて世界に4者しかいない。 スプートニクⅤは90%以上の有効性が証明された3つのワクチンの1つに数えられる。ロシア直接投資基金は再三にわたって有効性の引上げに力添えする構えを明らかにしてきた。実際、同基金はアストラゼネカとも協力関係にあり、当初62.1%だったその有効性をより高いレベルまで引き上げようとしている。
「製造が楽、使用も簡単」
そうしたうちの2人、英レディング大学のヤン・ジョンス博士、ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のポリー・ロイ博士は、ランセット誌の記事へのライセンス供与に参加していなかったが、「スプートニクⅤワクチンの開発はあまりに性急に作られた、透明性がないと批判を受けたものの、ここに出された結果は明確でわかりやすく、ワクチン接種の原則も科学的に示されている」とする見解を表している。
仏国民健康医療調査研究所のセシル・チェルキンスキ所長は、簡単な輸送は顕著な長所だとして、次のように語っている。
「ベクターワクチンのスプートニクⅤの最後の治験である第3フェーズの中間結果は感嘆に値する。このワクチンは様々な年齢グループにとって極めて効果があり、免疫原性が高い。これは実に素晴らしいニュースだ。なぜなら地球規模でのワクチン不足やロジスティックスの問題が想定され、展開時にあまりデリケートな温度管理が必要として、先日、緊急時の使用が許可されたワクチンがある中、こうした二重成分のワクチンは製造、導入が比較的しやすいからだ。」
アルゼンチンはすでにスプートニクⅤを入荷し、接種キャンペーンを開始している。地元の健康保健の専門家らはスプートニクⅤの有効性を高く評価している。
アルゼンチン感染症医協会のオマール・スエド会長は、「ランセットが掲載した資料は見事な結果を裏付けるものであり、異なるサブグループの接種の有効性、安全性について補足的な情報を与えている」と評している。
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ロシア保健省は2020年8月にガマレヤ研究所の開発のスプートニクⅤを承認。これで世界で初めての抗COVID-19ワクチンが誕生した。スプートニクⅤは研究で安全性が実証されたヒトのアデノウィルス・ベクターをプラットフォームとして製造されており、1本わずか10ドルと、世界で最も安価なワクチンに数えられる。スプートニクⅤは2020年末、ロシアの大規模無料接種キャンペーンで用いられることが決まった。こうした接種は12月には開始されている。
ロシア直接投資基金によれば、スプートニクⅤは世界16か国で承認されており、近未来にもボリビア、カザフスタン、トルクメニスタン、パレスチナ、アラブ首長国連邦、パラグアイ、ハンガリー、アルメニア、アルジェリア、スルプスカ共和国、ベネズエラ、イランでの製造が開始される。