通信社RBCがApp Annieの非公開データとして伝えたところによると、2月10日時点で、Clubhouseアプリをダウンロードした人の数は530万人。このうち、11月10日~2月10日の期間でみた世界のアクティブユーザー数は33万8000人で、ダウンロード数よりもずっと少ない。
急成長の理由は?
Clubhouseを積極的に利用しているのがセレブである。イーロン・マスクやマーク・ザッカーバーグなどのアメリカの企業家、アシュトン・カッチャー、パリス・ヒルトン、ジャレッド・レトなどの著名な俳優やミュージシャンがユーザーになっているため、特別な招待があれば、彼らと音声メッセージを交換したり、彼らが話していることをリアルタイムで聞くことができる。これもClubhouseの人気の一因だろう。こう説明してくれたのは、ロシア連邦政府金融大学ITビッグデータ分析学部指導教官でデジタル経済発展研究所所長のボリス・スラヴィン氏。同氏はスプートニクのインタビューで次のように語った。
また、スラヴィン氏によると、今の世界は新たなソーシャル・コミュニケーション・ツールを模索しており、コミュニケーション・ツールの用途も予期せず変わることが多いという。例えば、ソーシャルメデイアFacebookは学生のコミュニケーション手段として誕生したし、Instagramは写真家の画像交換ツールとして誕生したものである。人気になったソーシャル・コミュニケーション・ツールは往々にして新たな形態の模索を続けざるを得なくなる。
ソーシャルメディアとマスコミのモニタリング分析を専門とするBrand Analytics社のマーケティング部長、ワシーリー・チョルヌィ氏も同じ考えだ。
昨年11月にBrand Analytics社が発表した調査によると、Instagram、YouTube、TikTokのロシア人ユーザーの80%は自分でコンテンツを制作せず、ブロガーやアクティブユーザーが制作したコンテンツを見てコメントするだけだという。その点で主要SNSは制作側と視聴者側が明確に分かれた一種の「テレビ」となっているのである。
チョルヌィ氏は言う。「そういう意味でClubhouseは主流のトレンドとは一線を画しており、だからこそ大きな関心を呼んでいます。けれど、関心を抱いているのは不特定の大衆ではなく、Clubhouseがターゲットとするプロの人々です。」
会話SNSはそこまでユニークなアイデアなのか?
SNS分析サービスPopstersのアルセーニー・クシニル社長はスプートニクに次のように説明する。「このようなSNSは他にもたくさんありました。例えば、ソーシャルメデイアElloです。このSNSは誰かに招待されないと使用できないものだったので、Elloにアカウントを持っているという事実だけで「エリート」の証でした。けれど、結果的にはそれほど上手くいかず、数ヶ月後にはユーザーはElloを訪れなくなってしまいました。」
Clubhouseは長続きするのか?
世界はつい最近まで、InstagramやWhatsappといった主要SNSをダウンロード数であっという間に追い抜いたTikTokアプリの人気ぶりを議論していた。多くの人々が、ビジュアルの映える画像、短い動画のダイナミックさが多くのユーザーの注目を惹きつけているのだと語っていた。さまざまな評価をみても、画像のない投稿は画像を伴った投稿、ましてや動画を伴った投稿と比べると魅力が劣る。はたして画像機能のないSNSが長続きする可能性はあるのだろうか?
アルセーニー・クシニル氏は言う。
ボリス・スラヴィン氏の意見も同様だ。
「Clubhouseも他のSNSと同じように、大手に買収されて、より成熟したメディアのエコシステムに組み込まれるか、あるいは動画コンテンツを含め、機能を大幅に拡張させるかのどちらかの道を辿るでしょう。なぜなら、大衆的で多くの人が利用する娯楽というものは、どんなものであれ、短命が常だからです。」
ワシーリー・チョルヌィ氏は、Clubhouseはたとえ生き残ったとしても、決して大衆的なものにはならないと言う。
「声は実務的なコミュニケーション、思慮深いコミュニケーション、効率的なコミュニケーションには良いでしょうが、大衆的なソーシャルプラットフォームで主要形態になれるとは思えません。私たちは非同期コミュニケーションに慣れ親しんでいますが、Clubhouseは特定の人々にとってアクチュアルなテーマや問題の議論に同期的に人々を巻き込むものであり、オピニオンリーダーの声を聞くためのものです。今のところ、Clubhouseはトレンドセッター、マーケティング専門家、メディア人、芸能人などのビジネスネットワークメディアとして成長しています。今後もそれは変わらないと思います。SNSとして成功する可能性は十分にありますが、大衆向けではなく、どちらかというとエリート向けで成功するでしょう。」