バイデン大統領が日本に見せた意思表示 ゴーン元会長の日本移送のチャンスは広がるのか?

米国は、日本の検察からの請求を受け、当時、自宅軟禁中だったカルロス・ゴーン氏の国外逃亡を手助けしたとされる米国人2人の身柄を日本側に引き渡した。2人の弁護士らは、「日本の刑事司法制度は劣悪で、不当な取り扱いを受ける」と主張していたが、米国の裁判所はこの主張を退けた形となった。
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「スプートニク」は、基本的に犯罪者の身柄引き渡しに応じない米国が、ゴーン被告の逃亡幇助の2人をめぐっては、なぜ日本側の請求に従ったのか、専門家に意見を聞いた。

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ロシア科学アカデミー極東研究所のワレリー・キスタノフ所長は、今回の米国の措置は、偏にバイデン新大統領のおかげで実現したと指摘している。

ゴーン事件は世界のメディアでも大きく取り上げられ、日本からのあの逃亡劇はまさにセンセーションとなりました。結果、日本の司法制度の権威は失墜し、“ネズミすら通り抜けられない”と考えられていた出入国管理制度も一気に信頼を失いました。楽器箱に隠れて出国するという大逃亡劇は、映画化されても不思議ではないくらいです。米国はこうした要素をすべて考慮に入れた上で、ゴーン氏の逃亡を助けた2人の身柄の引き渡しに関して、例外的な措置を取らざるを得なかったということでしょう。しかし、今回、日本側の請求が認められたのは、何よりも米国で新たな政権が生まれたことに起因しています。トランプ前大統領はこの2人の身柄引き渡しを拒否しましたが、トランプ氏は今後もこれに応じることはなかったでしょう。しかし、バイデン大統領は、トランプ前大統領が外交において行った多くのことを否定し、覆そうとしています。とりわけ、アジアの同盟国との関係における路線を見直そうとしているのです」。

トランプ前大統領は、米軍駐留費の負担増を求める厳しい声明を出すなど、日本および韓国とん関係を大きく「震撼」させた。加えて、貿易赤字を縮小するため、経済分野でも無理難題を押し付けてきたとキスタノフ氏は指摘する。

ゴーン氏を手助けした2人は2020年に逮捕されたが、日本に移送されないままとなっていた。そこで今回の米国が日本に対して見せた「寛大な措置」は、バイデン大統領が菅首相に送った明確なシグナルだと言える。バイデン大統領は、トランプ政権によって蓄積された両国関係における否定的要素を払拭する用意があることを示して見せたのである。

では、今回の措置により、現在レバノンに居住しているゴーン元会長の日本移送を実現できる可能性が出てきたということなのだろうか?

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今から1年ほど前、ウォール・ストリート・ジャーナル紙からのインタビューで、ベイルートでの生活について問われたゴーン氏は、クラシックコンサートに足を運び、山でのハイキングに出かけ、友人たちとディナーを楽しんでいると答えた。また裁判費用を捻出するため、ハリウッドに自身の体験の映画化を持ちかけようとしているとも語った。

しかし、実は、このインタビューの少し前にレバノン警察は国際刑事警察機構(インターポール)からカルロス・ゴーン被告に対する国際逮捕手配書を受け取っている。

そこでキスタノフ氏は、米国にレバノンに外交的な圧力をかけてもらうことができたとしても、日本が、ゴーン氏のレバノンでの優雅な生活に終止符を打つことができるかは疑問だと述べている。「レバノンがゴーン氏の身柄を引き渡すことはないでしょう。また米国が、この問題についてレバノンに圧力をかけることもないでしょう。米国は今回、協力者2人の身柄を日本に引き渡したことで、あとの問題については、レバノン政府と直接、交渉すべきだという立場を示すと思われます。しかし、だからといって、レバノンを出国すればすぐに逮捕するというインターポールの国際逮捕手配書が無効となるわけではありません」。

つまり、ゴーン氏は収監こそされていないものの、幼い頃にレバノンを離れたあと、自身が身を置いてきた広い世界での移動が制限されていることから、ある意味で「囚人」のような状況にあると言えるだろうとキスタノフ氏は締めくくっている。

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