ライアンエアだけじゃない 民間機に強要された緊急着陸の諸例

5月23日、ギリシャのアテネからリトアニアのビリニュスに向かっていたライアンエアー航空機が機内に爆発物があるとの通報を受け、ベラルーシのミンスクに緊急着陸した。航空機には、ベラルーシで過激派組織に認定されたTelegramチャンネル「Nexta」の創設者ロマン・プロタセビチ氏が搭乗しており、着陸後、ベラルーシ当局に拘束された。
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このニュースはインターネット上に大きな騒動を巻き起こしたが、世界の歴史の中で民間機に緊急着陸を強要された例は実はこれが唯一ではなく、最も深刻な例でもない。中にはあやうく戦闘機の緊急発進まで準備された例がある。史実を振り返ってみよう。

モラレス大統領機の強制着陸

「ブッシュ時代の現代版」スノーデン氏がライアンエアの緊急着陸に憤慨
2013年7月、米国の諜報機関はボリビアのエボ・モラレス大統領の専用機がCIA元職員のエドワード・スノーデン氏を乗せているとの疑いを持った。疑惑を呼んだ理由は単に、モラレス大統領が交渉のために訪れていたモスクワから飛び立ったからだけだったが、専用機は直ちに緊急着陸するよう命じられた。事態は前代未聞。なぜならばこれは他国の首脳に対するあらゆる国際法、外交法の侵害である上に、大統領の専用機は常に特別に不可触的地位を有しているからだ。

フランスとポルトガルはモラレス大統領専用機に領空および空港の使用を禁じたため、飛行機はウィーンでの着陸を余儀なくされた。着陸後、機内では入念な捜査が行われたが、スノーデン氏の姿はみつからなかった。 

最終的に専用機は解放され、オーストリアからボリビアを目指して無事飛び立った。だが政治問題の専門家らはこれがどれだけ大きな騒動であったか、未だに忘れてはいない。NATO諸国が脅しを受けて、独立国の大統領の乗る専用機に強制着陸を命じざるを得なくなった事件だからだ。もしこれが米国人の乗る飛行機に対して行われたとすれば、世界中を巻き込むスキャンダルになっていただろう。

アンカラ空港で起きた強制着陸

2012年、トルコ空軍はシリアの民間機をアンカラ空港に強制着陸させるために戦闘機を発進させた。シリア機はモスクワ発ダマスカス行きの民間機だったが、トルコ側は軍事貨物を積載していると疑惑を抱いていた。

当時のエルドアン首相自身が「民間機は弾薬、軍事設備を積載している」とこの疑惑を公言している。

EU首脳、加盟国領空のベラルーシ機飛行禁止を決定 緊急着陸事件の制裁
機内の捜査後、機体がミサイル製造用部材とアルメニアのための通信用機器を運んでいたとことが公にされた。これらの物資の没収後、当機は予定通りシリアに向けての飛行を許された。

ベラルーシ機にウクライナが脅迫

2016年、ウクライナのキエフのジュリャヌィ空港を離陸したベラルーシ国営航空企業「ベラヴィア」機が離陸後、飛行空域に出るまで、あと50キロという時点で管制塔から離陸した空港に直ちに戻るよう命じられた。

ウクライナ側は拒否した場合、空軍の戦闘機を発進させると脅迫をかけた。機内にいるというアルメニア人を下ろすことだけがその目的だった。後日、ウクライナは脅迫の事実を否定したが、管制塔とベラヴィアのパイロットのやり取りは録音され、ネット上に保存されており、戦闘機を緊急発進させるという脅迫が実際行われていたことの確証となっている。

不思議なことに、当機から降ろされた件のアルメニア国籍の人物は即座に解放され、次のミンスク行きの便には搭乗し、1時間後には無事到着していた。

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