昨年、ロシアの大規模な経済フォーラムはコロナで中止となっていたため、日露のハイレベルなビジネス対話が行われるのは約2年ぶりだ。共同でモデレーターを務めた村山滋 ROTOBO会長(川崎重工特別顧問)と露日ビジネスカウンシルのアレクセイ・レピク議長(実業ロシア会長)は、フォーラムの伝統となっている日露対話の再開を喜び合った。
ビジネス対話のサブタイトルは「アフターコロナに向けた日露ビジネス協力の再始動」で、日本側からは、コロナ後の日露経済関係の再始動を見据え「ヘルスケア」「デジタル・イノベーション」「グリーン・脱炭素」の3つのテーマを軸に報告や提案を行った。
昨年6月、経団連日本ロシア経済委員会委員長に就任した國分文也氏(丸紅会長)は、健康寿命の伸長、特に予防医療の分野において日本は大いに貢献できると話し、丸紅とロシア鉄道がハバロフスクで進めている日露予防医療診断センターの設立について進捗を報告するとともに、同様のセンターを「ハバロフスクを起点にロシア全土に展開していきたい」と述べた。
ロシア鉄道のセルゲイ・パヴロフ第一副社長も、日本との協力は最優先事項の一つであるとし、シベリア鉄道を利用した日本からヨーロッパ向けコンテナ輸送のサービス拡大などについて報告した。また「サハリンと北海道が鉄道でつながれば、輸送、ひいては日露経済の結びつきはかつてないレベルにまで高まるだろう」と未来への希望を語った。
日本貿易振興機構(ジェトロ)の佐々木伸彦理事長は、ジェトロとスコルコヴォ基金との協力により、ロシアのスタートアップの日本への紹介を進めていると述べた。「ロシアはエッジの効いたスタートアップが輩出される国。日本企業へ彼らのポテンシャルを知らしめたい」としつつ、日本企業の中にはロシアのスタートアップをアウトソーシング先としか見ていないところもあり、この認識を変えていかなければならないとの見解を示した。また、ジェトロが得意としていた対面式の商談会はコロナ禍でオンラインに切り替わったが、新形式にも慣れ、日本企業にとって輸出のきっかけになっていると話した。
マツダとのタッグで成功を収め、極東における日露経済協力のモデルケースとなっているSOLLERS のワジム・シュヴェツォフ会長は、ロシアで普及しているカーシェアリングサービスについて紹介。必要に応じて車を使うサービスは特に法人契約が伸びているとし、「ロシアはこの分野で世界をリードしており、日本の投資家も非常に興味を持っている。9月の東方経済フォーラムでは何か新しい発表ができるかもしれない」と述べた。
日本の大手商社やメーカーと大規模プロジェクトに関わってきたロマン・トロツェンコ氏(AEONグループ会長)は、2020年にコロナ禍での日本からロシアへの輸出が減った理由について、日本製の機器が価格の手頃な他国製にとって代わったとし、アフターコロナになっても大幅な回復を期待すべきではないと指摘した。日露プロジェクトの数を増やすには、日露のメーカーが技術的なパートナーシップをより深く構築し新しいプロダクトを生み出すことと、JBICの積極的な参加が不可欠であるとの認識を示した。
また、三井物産の飯島彰己取締役からはロシアの極寒地で進めている風力発電事業やサハリン2からのカーボンニュートラルLNGの輸入について、Mirai Genomicsの林崎良英社長からは、日露が共同で開発しているCOVID-19の迅速検査キットについて報告があった。三菱自動車が進出しているカルーガ州のウラジスラフ・シャプシャ知事も、日系企業誘致の好例として紹介された。
会の最後にはレピク氏の呼びかけで、離れていても日本とつながっていることを示すため、上月豊久駐ロシア日本大使を交えて会場で記念撮影が行われた。
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