6月16日、ジュネーブでロシアと米国の大統領による首脳会談が行われた。ロシアのプーチン大統領は会談後の記者会見で、ジョー・バイデン米大統領との会談の結果に満足しており、この会談に敵意は存在しなかったと述べた。
スプートニクは、著名なアメリカ研究の専門家で、欧州国際研究センター副所長のドミトリー・スースロフ氏に、今回の首脳会談の成果と、長期化するロシア政府と米国政府の対立から抜け出すことに期待できるものは何かについて尋ねた。
首脳会談の議題は予想以上に多岐にわたった
スースロフ氏によると、両首脳の初の直接会談は、予想以上の成果を上げた。
今回の首脳会談の最大の成果は、核軍備管理に関して活発かつ具体的な対話を開始するという両大統領の共同声明が採択されたことだ。これは、当初の予定にはなかったことである。
またスースロフ氏は、米国側がサイバーセキュリティ分野のルール作りに着手したことも大きな成果だと指摘している。「米国側は、サイバー攻撃を受けてはならないとする16のカテゴリーからなるインフラのリストをロシアに渡した。これは、サイバー空間における国家的な『ゲームのルール』の策定に向けた大きな一歩となる。ロシアは何度も米国側にこのようなルールの合意を提案してきたが、うまくいかなかった。米国がこの問題での対話に臨まなかったからだ。しかし、今回のジュネーブでの会談では、突然米国がサイバーセキュリティにおけるルールを遵守するための具体的な提案をしてきたのだ」
会談の成功 なぜバイデン氏の下で成功できたのか?
バイデン政権は、ロシアとの関係を安定させる必要性を理解しており、それが現時点での米国の国益であると考えている。
スースロフ氏によると、それにはまず、米政権の主要な敵と位置づけられている中国の存在がある。「ホワイトハウスは今日、米国が中国に立ち向かうためのリソースが限られていることを明確に認識している。今の米国は、中国とロシアの両方との関係を同時にエスカレートさせることはできない。そのためバイデン政権は、ロシアではなく中国の封じ込めにリソースをより大きく割けるよう、関係を優先させる必要がある。今回のプーチン大統領とバイデン大統領との会談の成功には、米国の国内事情も影響している。トランプ氏と違って、現在のホワイトハウスのトップは『プーチンの操り人形』だとか、大統領選で当選させたのはロシアなどと非難されにくい。バイデン氏には、トランプ氏の背後に常に残っているこれらの非難の痕跡がない」
スースロフ氏は、民主党だけではなく、米国のエスタブリッシュメント全体、情報機関、リベラルなメディアのほぼすべてが反トランプに「働いた」と指摘する。トランプ氏のイニシアチブに包括的に反対することで、トランプ氏のロシアへのあらゆる行動の実施、実現が阻止されたのだ。
まさにこれが、2018年の夏にヘルシンキで行われたプーチン・トランプ両大統領による露米首脳会談後に両国の関係を好転できなかった原因となっている。
スースロフ氏によると、バイデン氏の場合、米国の国家組織全体による「サボタージュ」がないため、2021年6月にジュネーブで行われた露米首脳会談を非常に具体的かつ成功裏に進めることができたという。「共和党は確かにバイデン氏を批判しているが、トランプ氏と対立した強力な『ディープステート』がバイデン氏に不利に働いているわけではない。それどころか、バイデン氏は今、『ディープステート』と一体となって行動している。だからこそ米国のエスタブリッシュメントは、バイデン氏とプーチン氏の間で合意された内容の実行を期待できるのだ」
また、トランプ政権の最大の失敗は、バイデン氏と異なり、軍備管理を米国の外交政策の優先事項として捉えていなかったことにある。それどころか、この問題に関する米国政府の自由度を最大限に確保しようとした。
バイデン政権は、その逆のスタンスにある。軍拡競争を望まないということが、ロシアとの対話において最初のポジティブな進展をもたらしたのだ。