イベントは、バーニャをメインにしたリゾート施設「がちょう・白鳥」の5ヘクタールの土地を貸し切って行なわれた。オーナーのアナトーリー・チトゥニンさんは、オーガナイザーのひとり。「バーニャの魅力は、余計なものを払い落として、新しい自分に生まれ変われること」と話す。自然に囲まれた敷地内にはサウナルームと休憩室、談話室などを備えた7種類の豪華バーニャがあり、週末ともなると予約でいっぱいになる。
ロシアバーニャの醍醐味は、白樺や樫の木の枝葉で作った「ヴェーニク」を使って身体を叩き、マッサージすることだ。これはウィスキングと呼ばれ、血行促進やデトックスに効果がある。やみくもに叩けばいいというものではなく、バーニャに対する深い知識や高い技術が要求され、一人前のマスターになるには何年もかかる。
バーニャ・フェストでは、地方予選を勝ち抜いたウィスキングマスター達がロシア一の称号をかけて技を競い合った。根畑さんも、オンラインレッスンやウィスキングマスターのもとでの修行などを通し、技術を磨いてきた。その努力が認められゲスト出演することができた。
根畑さん「ウィスキングは、家族や友達など身近な人を喜ばせたい、健康にしてあげたいという気持ちで習う人が多いです。僕はまだこの世界のスタート地点に立ったばかり。バーニャにはマッサージだけでなく音や香りのヒーリングの要素も含まれていて、人を癒して元気にするための学問だと思うと、とても奥深いです。ロシアはあまり知られていない国ですが、サウナ好きやバーニャ好きが高じて、ロシアに行ってみたいという人が増えればいいなと思います。」
バーニャというのは単なるリラクゼーションではなく、土地に根ざした文化であり、一つの世界観だ。有名なウィスキングマスターのひとり、スタニスラフ・パニンさんはモスクワ郊外の自宅にプライベートバーニャを構え、1日1名限定でゲストを迎えている。訪れるのは、社会的地位のある30代から50代の男女で、著名人も少なくない。ウィスキングやマッサージ、ピーリングなどを数時間にわたって受け、自分自身の感覚に集中することで、より仕事に励めるようになる。自分の心を見つめるという意味では、座禅やヨガとも共通するものがある。
パニンさん「真のバーニャとは瞑想であり、バーニャを通して本来の自分自身と向き合うことになります。そこに国境や人種の違いはなく、あるのは人間本来の姿だけ。外見は違っても幸せや健康を求める内側の心は共通です。」
バーニャフェストの敷地には大小あわせて約50のバーニャがあり、実際に入って比べることができる。値段は設備や素材によって大きく異なるが、モバイルタイプなら50万円ほどで標準型が買える。従来の小屋タイプと違って最低限の設営作業ですみ、配達されたその日に使うことができるため、人気を集めている。根畑さんは「全てのバーニャに寝転がれるスペースがあり、ウィスキングする前提になっているんです。普通に座るだけでなく、こういう楽しみ方があるということも含めて日本に広がってくれたら」と話している。
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