海上自衛隊のヘリコプター搭載護衛艦いずもはどのような目的に適しているのか?

2021年末、日本ではヘリコプター搭載護衛艦いずも(DDH–183)を用いた演習が予定されている。演習には、米空軍の最新鋭ステルス戦闘機F–35Bが参加するが、いずもが完全な空母として行われるのはこれが初の演習となる。
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空母として、戦闘に向け始動

いずもは元々、ヘリコプター搭載護衛艦(SH–60ヘリコプター14機を収容)として建造されたものであるが、最近、新たな艦上機の搭載・運用を可能にするための改修工事が行われた。飛行甲板が強化され、防護用の耐熱処理加工がなされたほか、格納庫や補助設備も改修された。

しかし改修工事をしただけで、いずもを空母に変えることはできない。新たな機材を管理、維持し、使用するための乗組員の訓練も必要である。F–35Bの技術的なメンテナンスを行うのは、SH–60哨戒ヘリコプターを維持するのとは大きく異なる。しかも、SH–60は対潜哨戒ヘリコプターで、2つの魚雷を搭載しているが、F–35Bにはより幅広い装備が施されており、25mm機関砲、空対空および空対地のミサイルを備えている。このタイプの弾頭を用いるためには、艦船に保管庫が備わっていなければならず、装備の技術や大砲やミサイルを扱い方についても訓練が行われる必要がある。

日本の最新戦車は日本を防衛することができるのか?
ヘリコプターと戦闘機ではその戦術も大きく異なる。F–35Bの戦闘行動半径は865キロだが、これはSH–60(185キロ)の4.6倍に相当する。ヘリコプター搭載護衛艦いずもは、潜水艦の攻撃を受けた船隊を護衛する艦船として、また降下部隊の着陸に使用されてきた。しかし改修後のいずもは、攻撃型空母となり、敵の空軍部隊に対抗し、領空を支配し、敵の艦船と戦い、地上に空爆を実施することができるようになる。その海上自衛隊における役割は大きく変わりつつある。今やいずもは、艦隊の核となり、大規模な海上作戦を実現する力を備えている。

そこで演習では、発着の訓練だけでなく、乗組員全体―とりわけ技術部門の船員の行動が練られ、また戦法の取りまとめや指揮系統の演習も行われる可能性がある。

なぜ空母が必要なのか?

空母は、防空およびミサイル防衛システムでしっかりと守られた、移動可能な戦闘機用離発着基地である。普通、陸上の戦闘機の拠点となるのは、敵によく知られ、戦闘機、戦術ミサイル、巡航ミサイル、または弾道ミサイル、核弾頭によって攻撃されうる地上の基地であるが、冷戦時代、ソ連と米国およびその同盟国のすべての地上の基地は、核攻撃の目標のリストに含まれていた。一方、空母はミサイルや爆弾では簡単に撃破されず、また敵の攻撃にも耐えうる力を持っている。これが空母の主要な利点である。

空母の艦載機は離発着基地がなくても行動することが可能である。通常、戦闘機30機に対して、滑走路、防御構造、燃料および弾頭の貯蔵庫を持つ基地が1つは必要とされる。一方、ジェラルド・R・フォード級航空母艦の艦載機数は最大90機、つまり地上の基地3つ分の戦闘機を搭載できるのである。

それぞれの国に独自の空母があり、航空団の構成も、それぞれの国の戦略や保有する戦闘機によってさまざまである。他国の沿岸で戦闘を実施することができる米国は大きな船団を持つ巨大な空母を建造している。一方、日本などのように、自国の沿岸部や近隣海域の防衛を主な目的とする国々は、陸上の航空部隊をより機動的なものにするため、やや小型の空母を建造している。

海上自衛隊のヘリコプター搭載護衛艦いずもはどのような目的に適しているのか?

この表からも、海上軍事ドクトリンで、沿岸部および国境周辺海域の防衛に重点を置いているロシア、中国、インドは、搭載機数が30〜40機のそれほど大きくない空母を建造していることは明らかである。海上の航空部隊が、発達した地上の基地網を拠点とする地上航空部隊を補完している形である。日本の空母はその性能から見て、中国やロシアのものに近く、防衛の任務により適したものである。しかし、いずもが米国や英国の空母とともに行動する可能性は除外できない。

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