砂嵐が火星の大気から水分を失わせる上で重要な役割を果たしている

火星探査機「ExoMars-TGO」のデータが、砂嵐により火星の大気中の水分がこれまでの5倍から10倍急速に宇宙へ蒸発していることを示している。研究者らは、この嵐はほぼ毎年発生しており、これらが火星から水分を消失させる上で重大な役割を果たしていると見ている。研究結果が学術誌『ネイチャー・アストロノミー』に発表された。
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研究者らは、古代の火星表面には川や湖、大海が存在したと考えており、そこの水はほぼ北極海と同じような状態だったいう。創成期の火星の総水量は、表面を140メートルの厚い層で覆うのに十分なものだった。研究者らは今のところこれらの水がどこに消えたのか断定することはできていない。

この謎の解明を米国の探査機「MAVEN」とロシアの探査機「ExoMars-TGO」の2台が試みている。2台の探査機は、火星の希薄な大気中にどれくらいの水分があるか観測を行っており、季節の変わり目や砂嵐、他の大気現象に関連する水分濃度の変動を追跡している。

ロシア科学アカデミー宇宙研究所の副所長でミッション「ExoMars-TGO」の科学指導教官のオレグ・コラブレフ氏が指導する惑星科学者らが、探査機「ExoMars-TGO」や「MAVEN」、「Mars-Express」のデータ分析を行い、火星表面および大気からの水分の蒸発に関しては、予想外に地域で発生した砂嵐が重要な役割を果たしたことを明らかにした。

この情報は巨大な地域的な砂嵐の発生時に得られたもので、この砂嵐は2019年の1月から2月にかけて火星で発生している。

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その際、火星の北半球は冬を迎えており、この時期には通常、巨大な砂嵐が発生する条件が十分にそろっている。大気中のたくさんの量の砂埃が火星表面の気温を20度上昇させた。このことが火星の大気中の水分の「反応」を急激に変化させた。これまで探査機「ExoMars-TGO」のセンサーは高度60キロとそれ以上では十分な水分量を観測していないが、砂嵐の発生後にはその量が急激に増加をはじめた。

その結果、以降の40日間(火星時間)で大気中から水分が蒸発する速度がおよそ5倍から10倍高まった。研究者らによれば、その際に火星は、通常、水分の蒸発速度が年間の最大値に達する夏季と同じ水分量を失ったという。

コラブレフ氏と同僚らは、火星では同じような砂嵐がほぼ毎年発生していると強調する。研究者らは、このことが過去にこれらの砂嵐が火星表面から水分を失わせる上で重要な役割を果たし、惑星の外観と化学成分に大きな影響を与え続けていることを証明していると結論付けた。

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