成田晋司裁判長は、地名リストの公開により被差別部落出身者が差別や誹謗中傷を受けたり、結婚や就職の際に差別的な扱いを受けたりする可能性があることを指摘。また、その損失は深刻かつ重大で、その回復を図ることは著しく困難だと説明したうえで、地名リストの公開は「社会的に正当な関心事とは言いがたい」とした。
訴えによれば、川崎市の出版社は2016年2月、戦前に刊行された全国5360以上の被差別部落の地名などが掲載された報告書「全国部落調査」の復刻版を販売すると告知し、さらに複数のウェブサイトにそのリストや同盟幹部らの名簿を掲載した。サイトでの公開後、自治体には該当地区に関する問い合わせが相次いだという。
解放同盟側の申し立てを受け、横浜地裁などは同年、出版禁止やサイト削除を命じる仮処分を決定。同盟側はその後、1人110万円の賠償など計約2億6千万円を求め提訴していた。
一方、出版社側はリストの公開禁止について「学問や表現の自由を侵害する」と主張。「部落の情報の公言を不法行為とするなら、部落問題の議論は萎縮し、真摯に問題に向き合う自治体職員や研究者が不利益を被る」としていた。
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