フィギュア特集

日本人ファン不在の冬季五輪: 羽生結弦選手は北京五輪でファンのサポートなしに戦うことになるのか?

2022年開催の北京五輪では、新型コロナウイルスの感染予防対策により、日本のフィギュアファンが観戦できなくなったことを受け、中国政府がオリンピックのスターである羽生結弦選手を力強くサポートすると約束したことが、中国でも日本でも熱い議論を呼んでいる。無観客で開催される2度目のオリンピックはどのようなものになるのか、中国政府指導部が突然、羽生選手の応援を引き受けた理由とはなんなのか、「スプートニク」が取材した。
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無観客のオリンピック再び

2022年3月に中国の北京で開催される冬のオリンピック・パラリンピック大会について、新型コロナウイルス感染予防対策に従い、観戦チケットは中国本土の観客にのみ販売されることが9月20日、明らかとなった。これは、国際オリンピック委員会(IOC)の広報部が、北京大会の組織委員会の代表と会見したあと、発表したものである。
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観客席に入るための条件が具体的にどのようなものになるのかは、現時点ではまだ明らかになっていないが、すでに、東京大会と同様、北京大会も外国からの観客は受け入れないということだけははっきりしている。つまり、これまで羽生結弦選手のすべての大会を観戦し、観客席から声援を送り、演技を終えた羽生選手に贈るプーさんのぬいぐるみをリンクに投げ入れてきた日本の羽生結弦ファンたちは、応援に行けないことを意味する。
観戦チケットについてのニュースが流れるやいなや、インターネット上には、この決定にがっかりしたファンたちのコメントが寄せられた。日本のメディアもこの知らせに大きな関心を示し、「羽生選手の応援を中国のファンの皆さんに託したい」というファンの想いを伝えると、このことは日本でも中国でも驚くほど大きな反響を呼んだ。
その議論は大々的なものとなり、中国政府もコメントを出すに至った。
まず、在日本中国大使館が公式ツイッターで反応し、日本語で、「ファンの皆さんの声がこちらにも届きました。北京冬季オリパラ会期中に、中国在住の日本人の方々、大会の日本人ボランティアの皆さんとともに、日本選手団をしっかり応援して行きます」と宣言した。
すると、中国国内の主要メディアである「人民日報」紙や国営テレビ局「新華社通信」なども好意を伝え、さらには中国外務省の華春瑩報道官も公式ツイッターにメッセージを投稿、「現地応援は中国の皆さんに託す、との声を目にしました。お任せください! そして中国の新型コロナ対応へのご理解、ありがとう!冬季五輪・パラ共に、日本を含む各国選手の方々をしっかりと応援します」と語ったのである。

異なる見解

一方、日本のインターネットユーザーらは、今回の決定に様々な反応を見せている。
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「この動きは、北京五輪ボイコット論や、開催への批判を和らげる目的があると思う。中国と言う国が五輪憲章を守れているのか、証明する必要があると思う。」
「共産党の面子にかけても成功させなければ成らない北京オリンピックの目玉選手の羽生は必ず出場しないといけない選手だから共産党が大事にするのは当たり前!」
「本人は前回の平昌オリンピック以降、ずっと一貫して小さな頃からの夢の4回転アクセルを目指すと中国での人気も今にはじまったことではなく多くの人が羽生選手を応援しているのが事実です。米国様でルールが変わったり、日本で後ろ楯がなく過小評価されがちな羽生選手ですが、ファンは羽生選手の演技が観たいのと、オリンピックより夢を叶えて欲しいだけだと思っています。」
「お心遣い、たいへんありがとうございます。北京五輪に関して、ご本人はまだノーコメントですが。もし出場されても、他の選手共々平等に、大切にお願いいたします。彼は常に「人様ファースト」がモットーですが、勝負どきにご自分が特別扱いされるのは好みません。それから、絶対無傷で返してね。」

中国人ファンの愛

多くの人々が中国政府高官の発言には疑問を感じているものの、ほとんどのファンたちは、羽生結弦選手のスケーティングが国や民族を超えてフィギュアファンの心を魅了していることに喜びを感じている。
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ちなみに、中国のネットユーザーたちが羽生選手を応援するのはこれが初めてではない。2019年、羽生選手が25歳の誕生日に出場したグランプリファイナルで2位になったときにも、サポートを表明した。中国のファンたちは、中国版のTwitterであるウェイボー(微博)に、羽生選手への応援のメッセージを精力的に書き込み、「Feel Sorry for Yuzuru Hanyu」のハッシュタグの閲覧数は2億9,000万を超えた。
大会では羽生選手は米国のネイサン・チェン選手に惜しくも敗れ、銀メダルに終わったが、それによりさらにファンの心を魅了した。
北京五輪への日本の出場選手はまだ決まっていないが、世界中のファンが、まもなく羽生選手が3つ目の金メダルをかけた戦いに参加し、世界で初めてとなる4回転アクセルを成功させることを期待している。そしてファンたちは観客席とテレビの向こうで、羽生選手を応援することになる。
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