緊張状態の韓国 岸田新首相が韓国大統領に電話できないのはなぜか?

日本の岸田文雄首相は就任後の1週間で、すでに何人かの世界の首脳らと電話会談を実施した。しかし、10月4日にすでに岸田氏に首相就任のお祝いのメッセージを送った韓国の文在寅大統領との電話会談は未だ実現されていない。そして韓国メディアはこの事実に大きな注目を寄せているとジャパンタイムズは伝えている。日本政府が韓国側に対して沈黙を続けるのはなぜなのか、また日韓関係の危機を背景に、韓国はこの沈黙を破ることができるのか、「スプートニク」が専門家にお話を伺った。
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これまで日本政府は韓国に対し、歴史認識における対立を政治的な目的で利用するのをやめるよう繰り返し求めてきたが、実際の状況はなにも変わっていない。反日主義は韓国政府の内政方針においてもっとも大きな主軸であったし、今もあり続けている。
日韓の最近の危機的状況の引き金となったのは、2019年に日本が韓国のハイテク産業に対する部品の供給を一次的に制限したことである。韓国はこれを、戦時中に過酷な労働を強いられた元徴用工問題で、韓国最高裁判所が日本企業に賠償を命じる判決を下したことへの報復措置だと捉えた。こうした対抗措置の応酬の結果、韓国の消費者たちの間で日本製品のボイコットが引き起こされた。
ロシア科学アカデミー極東研究所朝鮮センターの主任研究員、コンスタンチン・アスモロフ氏は、加熱した対立はもうかなり以前に沈静化しているものの、新たな首相の下で、日韓関係がすぐに正常化するとは考えにくいと指摘する。
「というのも、2015年に、当時外相だった岸田氏が、日韓間の慰安婦問題の最終的かつ不可逆的な解決を確認した日本政府と韓国政府の合意文書の策定に直接関与したからです。しかし、現在の文在寅大統領はこの合意は誤りであったとして、事実上破棄しています」。
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一方で、韓国のビジネスエリートたちは、日本で新首相が誕生した後すぐに、日韓の「氷を融かそう」と試みた。しかも大統領を先んじて、である。大韓商工会議所の崔泰源(チェ・テウォン)会長は、誰よりも早く岸田氏にお祝いの書簡を送り、その中で、岸田氏に対し、冷え込んだ日韓関係を改善し、ビジネス関係の協力拡大を呼びかけた。
しかし、韓国のビジネス界の力だけで、状況を改善することは不可能である。その理由について、国際関係および日本研究の専門家であるドミトリー・ストレリツォフ氏は、日本政府は両国間の歴史認識というやっかいな問題に対し、韓国側が態度を改め、その歴史認識を利用するのをやめるよう求めているからだと指摘する。
「本格的なものでないにせよ、隣国である日韓の対話は今後、必ず行われます。安全保障問題、情報交換の分野においてこれはとりわけ重要なことです。一方、両国関係が危機的状況にある中、5月には韓国国家情報院のトップが日本を訪れています。朴智元(パク・チウォン)院長は東京で日本の代表と会談し、北朝鮮情勢について意見を交わしました。このように、日本と韓国の通信ルートは存在します。これは両国の利益に適うものだからです。韓国との貿易拡大は日本にとっても有益です。中国との商取引より良いものと言えるかもしれません。なぜなら日本は韓国のことをよく理解しているからです。一方で中国は全体主義的政治体制の国であり、日本のビジネスにとってはルールが不透明だからです」。
ビジネスエリートに続いて、文在寅大統領も岸田氏に首相就任に際してお祝いの言葉を送った。韓国中央日報によれば、文大統領は、両国が、民主主義と市場経済の主な価値観を共有しながら、交流を図り、協力していく日を楽しみにしていると述べた。
あとは岸田新首相が、韓国からの「和解の行動」に応じるためについに受話器を手に取るのを待つだけである。
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