はたして岸田首相はロシアとの関係発展に関心があるのか?
一部のロシア及び外国の専門家たちは、岸田首相は露日関係に個人的な関心を持っていないため、岸田政権下で露日関係は停滞する可能性が高いと考えている。例えば、安倍元首相は日露関係に関心を抱いていたが、それは1980年代に外相を務め、ソ連との関係正常化を試みた父親の悲願を叶えたいという思いと大きく関係していた。また、外相を務めたこともある河野太郎氏も同じような動機を持っていると言われている。河野氏の祖父は、1956年のソ日共同宣言の交渉で重要な役割を果たした。しかし、岸田首相には、このような先祖からのつながりはない。
一方、 中村教授は、岸田首相がロシアとの関係を発展させることに義務を感じていないと考えるのは間違っていると指摘している。
中村教授:「それは間違いです。何故かというと、今回、岸田さんが総理大臣になれたのは安倍さんの支持があったからです。ですから、安倍さんに対して、安倍さんとプーチンさんのこれまでの約束をさらに発展させなければいけないという義務があるわけです。」
南クリル諸島(日本では北方領土と呼ばれている)に関する厳しい声明は障害か?
岸田首相は衆院本会議での初めての所信表明演説で、「ロシアとは、領土問題の解決なくして、平和条約の締結はない」と述べた。これについて、ロシア外務省のザハロワ報道官は、このような最後通告は平和条約問題の解決をさらに遠のかせるとする厳しい声明を発表した。
このようにして、南クリル諸島の問題が解決される可能性はこれまで通り低いという印象が形成された。しかし、これは露日関係が停滞または悪化することを意味しているのだろうか?
中村教授:「岸田総理は5年間外務大臣をしていて、ラブロフ外相とも会っていますし、プーチン大統領とも会談を重ねています。北方領土の帰属問題は解決することは不可能だと、非常に難しい問題だということを一番よく知っているのは岸田さんだと思っています。だから、岸田さんは北方領土問題を棚上げ、横に置いといて経済関係を進めるしかないと考えていると思います。
私は日露関係の経済協力が多い分進むと思います。一方、北方領土での経済協力活動は無理です。ですから、北方領土以外のところ、極東ロシア、 またはシベリア、モスクワを対象とした経済協力関係が発展すると思います。 これについては、例えば、医療、あとは農業施設の改善、そういったところで日本とロシアの経済協力関係はお互いにメリットのある形で、お互いに提案しあうという方向に向かうと思います。 また、日本人にとっては、一番のメリットは観光ですので、この分野で最も大きい発展を期待することができると考えています。」
スプートニク日本:岸田首相は領土問題の解決を再び脇に置いてロシアとの関係発展に取り組んでいるとして批判されることになりませんか?
中村教授:「大丈夫です。何故かというと、今、岸田総理が進めようとしていることは、安倍総理とプーチン大統領の間でのシンガポール合意(2018年)です。つまり、北方領土問題というよりは経済協力で安倍総理とプーチン大統領の間で合意ができていた路線を進めることです。ですから、北方領土問題に蓋をすると言ったらもうこれは大問題になるので、横に置いといて、経済協力活動、特に観光を進めると。そして、経済産業大臣が萩生田さんですので、経済協力関係は前のめりで進んでいくことになると思います。
そもそも岸田さんというのは自民党の中でもリベラル派なんです。ですから、日米同盟も重要だけれど、それだけではなくて、日本と中国、日本とロシアとの関係も発展させなくてはいけないというバランス外交です。そういう外交を取ろうとしている政治家なんです。」
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