ISの戦闘員のグループがタリバンに加わったのはこれが3回目。これまでに50人のグループ、60人のグループがすでにタリバンに移っている。一方、タリバンは、アフガン軍の元兵士らがISに加わったとの情報を否定している。タリバンのザビフラ・ムジャヒド報道官は、この情報について、「フェイスブックで拡散されている噂」だと断じた。
ISIS、「アルカイダ」、タリバンに対する国連安保理決議案による制裁の分析・監視グループの専門家で、国際テロ問題およびアフガニスタン問題の専門家であるゲオルギー・マチティゼ氏は、「スプートニク」からの取材に応じた中で、アフガン軍元兵士らがISに転身することは考えられないと指摘し、次のように述べている。
「わたしがこれまでにアフガニスタン軍の兵士たちと話をしてきた経験から言うと、彼らがISに加わる可能性は少ないと思います。彼らは教育を受けた者たちで、異なる見解を支持しています。しかも、一部はアフガニスタンから出国しています。また一部はタリバンに雇用されています。これは、なんらかの理由でタリバンから信用されている人物だと思われますが、タリバンは特殊部隊を創設し、国内の秩序を保たなければならないからです。ごく普通の兵士たちは戦闘を望んでおらず、穏やかな生活を送りたいと思っています」。
一方、マチティゼ氏は、タリバンとISが対立していることははっきりしていると指摘する。
「不思議なことではありますが、現在、ISは現在、タリバンにとってもっとも深刻な危険な存在となっています。タリバンは政権に就き、国を統治し、秩序を保たなければなりません。一方でISはテロ行為を行い、不安を煽り、秩序を乱そうとしています」。
またカブールの軍病院での爆発事件について、マチティゼ氏は、
「もちろん、良いことなど何もありません。タリバンが大々的な対テロ措置を講じることができなければ、安全が十分なレベルで確保されているとは言えません」と述べている。
さらに、マチティゼ氏は、タリバンは、アフガニスタン国内からテロの脅威を拡散しないとする国際社会に対する約束を守っていると指摘する。マチティゼ氏によれば、ISに転身する可能性があるとすれば、それは他のテロ組織だという。
「たとえば、クンドゥズでの爆発(10月8日、イスラム教シーア派の礼拝所で発生)はウイグル人による犯行です。つまり、ウイグル人の一部がISに加わったということであり、このことは、アメリカとタリバンとの対話が開始されたときに、ウイグル人たちは和解が達成されたら何をすべきか考えていたという情報を証明するものとなりました。ウイグル人たちは、アフガニスタンに自分たちの居場所がなくなるだろうということを理解したのです。クンドゥズでのモスクの爆発事件の後、タリバンはウイグル人たちを、より厳しく監視できるよう、バダフシャンからナンガルハルやその他の地域に移住させました」。
マチティゼ氏によれば、ISのイデオロギーにそれほど感化されていない戦闘員たちがタリバンに移っているという。
「多くの戦闘員は死にたくないと思っています。テロ行為を続ければ、タリバンに殲滅されてしまうということを理解しているのです」。
アメリカでは現在、アフガニスタン駐留失敗の原因追求が進められているが、ウォールストリートジャーナルに、誰が何人ISに移行したのかという正確な情報はないだろうとの見方を示す。
マチティゼ氏は、ウォールストリートジャーナルの記事は政治的な動機によるものだと推察されると述べ、次のように続けている。
「誰の責任なのか?軍指導部なのか、政府指導部なのか。こうした議論を背景に、米国は注意を逸らそうとし、実際には戦争など起こっていないのに、タリバンが政府側に移ったとか、ISが活発化しているなどと騒ぎ立てているのです。米国には、アフガニスタン軍と共同でISを一掃する大きな可能性がありました。しかし、ISは毎回、奇妙な形で生き残りました。アフガニスタンがISの支持者らを家族とともに東部から北部に移動させた経緯は今も説明されていない状況です。これについてはアフガニスタン北部に勤務していた国連アフガニスタン支援ミッションの代表者らが証言していますし、サマンガンやジャウジャンの州知事らもそう述べています」。
マチティゼ氏は、現在、ISとの戦いにおいて、タリバンを邪魔するような外的要素は何もないと述べ、「米国は支援を申し出ましたが、タリバンはこれを拒否しました。彼らは米国を信頼していないのです」と締めくくった。
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