「スプートニク」はロシア科学アカデミー極東研究所日本研究センターのワレリー・キスタノフ所長に、もし日本が北京五輪の外交的ボイコットを決めた場合、どのような影響が起こりうるのかについてお話を聞いた。
キスタノフ氏はもしそうなれば、日中関係が複雑化することは間違いないとして、次のように述べている。
「中国は冬季五輪の開催に大きな意義を見出していることから、日本がもしそのような決定を下せば、両国関係に大きな打撃を与えることになるでしょう。というのも、オリンピックや万博のような大規模な国際イベントは、国際舞台における国の威信を高め、大きな経済的利益を得ることができるからです。しかも、事実上、新たな冷戦とも言える米国との対立を背景に、欧米では反中ムードがますます広がっています。そこで中国にとっては、今、オリンピックを成功させ、中国のより良い面を見せつけ、国際社会の共感を得ることが非常に重要なのです。しかし、それは米国にとっては有益ではありません。そこで米国は、日本を引き込んで、ボイコットを自らの政治的な目的に利用しながら、中国で開催されるオリンピックを無視しようとしているのです」。
最近、開催された米中首脳会談では、バイデン大統領は台湾問題に対するこれまでの発言を軟化させたようにも感じられた。バイデン大統領はこの中で、米国が、台湾は中国の一部であるという「一つの中国の原則」を支持すると明言した。しかし、北京五輪のボイコットに対する同盟国への緩やかな「圧力」は、米国の新政権が依然として中国との対決姿勢を保っていることを示している。
さらにこのことは、米国が依然、米国が台湾に防衛兵器を供与する(米国は台湾居民の安全、社会や経済の制度を脅かすいかなる武力行使にも対抗しうる防衛力を維持し、適切な行動をとる)ことを義務付けた1979年の台湾関係法を継続させていることからも解る。
現在、台湾をめぐる情勢は米国の中で大きなものになりつつある。しかも米国はこの問題について、日本政府もこれを支持するものと期待し、ともに台湾海峡の安定と安全を守っていくとの声明を表していると指摘する。
「これも、北京五輪の開催を前にした中国に対する明確な攻撃です。こうしたすべてが日本を非常に難しい複雑な状況に追い込んでいます。かつて日本は、米国や欧米諸国とともに1980年のモスクワ五輪のボイコットを支持しましたが、ソ連とは、経済・貿易関係がそれほど発展していなかったこともあり、米国の方針に容易に従いました。しかし、中国に対してはあのときのようには行きません。中国は、日本にとってもっとも近くの隣国であり、多数の日本企業が拠点を置く、最大の貿易相手国なのです。しかも両国関係は(オリンピックをボイコットせずとも)、長年にわたる尖閣諸島問題によって複雑化しています。ですから、日本は今、非常に難しい立場に置かれていると言えます。もし日本が中国五輪のボイコットを支持しなければ、米国から非難されることになり、ボイコットを支持すれば、中国に対する感謝の気持ちがないとして日本は当然のバッシングを受けるでしょう。中国は、パンデミックという条件下の非常に困難なときに、東京五輪を支持したのですから。日本がこの複雑な状況をいかに切り抜けるのか想像もできません」。
キスタノフ氏は、もしも日本が実際に北京五輪をボイコットすると決めた場合、中国側はこれに激しく反発し、両国の経済協力関係に深刻な影響をおよぼすことになるだろうと指摘する。
「中国は経済制裁を発動する可能性があります。たとえば日本からの輸入の制限、あるいは中国の食糧品の日本への輸出の制限などです。というのも、日本は食糧を完全には自給できておらず、一部を中国から輸入しています。日本が北京五輪をボイコットすれば、中国が日本への輸出を停止するという可能性も十分に考えられます」。
オリンピックのボイコットは、世界における中国のイメージダウンにつながるものである。これが日本の支持の下で行われた場合、中国の憤慨は計り知れず、それに伴う対抗策が日本にとってどれほど厳しいものになるのかは予測不能だとキスタノフ氏は結んでいる。
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