非武装地帯(韓国)
北緯38度線に沿って朝鮮半島を分割する非武装地帯(DMZ)は、世界でもっとも閉鎖的で、もっとも厳重に警備されている国境線である。全長241キロメートル、幅4キロメートルの東西に延びる土地は、民間人に対しても、兵士に対しても、完全に閉鎖されている。国境警備隊が犯罪者を発見した場合、警告なしに発砲することができる。非武装地帯には、実際、地雷原が点在しており、この地帯の両側に大規模な兵力が集中している。
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/ 北朝鮮の地上軍が保有する1万500基の大砲と多連装ロケットシステム(MLRS)のうち、実に8,000基が南北朝鮮の国境付近に配備されている。これらの兵器は、攻撃を仕掛けてくる敵軍に猛烈な砲火を浴びせることができ、ソウルを砲撃することも可能である。非武装地帯の北方にはおよそ30万人の兵士が配置され、東西の沿岸部は数十万の部隊によって囲まれている。国境付近には、地下シェルター、通信網、そして強化された地下壕網が構築されている。この防御を突破するためには―もしそれが可能であったとして―きわめて大きな損失を伴うことは疑いようもない。
一方、韓国側には3つの地上軍のうちの2つが配置されている。数では北朝鮮に劣るものの、その装備の水準は比較にならないほど優れたものとなっている。さらに、韓国には3つの米軍基地が置かれていることから、軍事衝突が起こった場合には、すぐに同盟国からの支援を受けることが可能となっている。特に、非武装地帯の近くには、米国のTHAADミサイルが配備されている。
NORAD 北アメリカ航空宇宙防衛司令部(米国)
米国の国家安全保障の中枢であるコロラド州コロラド・スプリングス近郊にある3キロメートルのシャイアン・マウンテンの地下に司令部NORADが隠されている。これは米国とカナダが共同で運用している連合防衛組織で、核ミサイル・弾道ミサイルの発射警戒や戦略爆撃機の動向監視などを行っている。核戦争が勃発した際には、この地下司令部から、政治家と軍の司令官らが部隊を指揮することになる。
地下施設の建設は1961年に開始され、3年かけて人工洞窟網が構築された。そこには3つのトンネル(全長180メートル、高さ20メートル、幅15メートル)が4つのトンネル(全長100メートル、高さ17メートル、幅10メートル)と交差し、格子状に設置されている。地下には内部構造物が15個あり、そのうちの12個は3階建て、残り3個は平屋または2階建てとなっている。
厚さ9.5ミリの低炭素鋼のプレートでできた外壁は鉄骨構造に支えられている。構造物は、地震や核攻撃に際する爆風にも耐えられるよう、制震材となるバネの上に設置されている。
シャイアン・マウンテンに作られた長さ1.5キロの湾曲したトンネル状の「世界終末の地下壕」への入り口は、重さ25トン、幅1メートルという重厚な耐爆ドアで閉じられている。また地下司令部の周辺には、複数の防空システムが配備されており、要員たちが何日間にもわたって包囲を耐え抜くことができるようになっている。
接近阻止区域(ロシア)
米国はこれまで、ロシアとの軍事紛争が起こった際の米国の最優先課題は、いわゆる接近阻止/領域拒否区域(A2AD)を無力化することだと再三、主張してきた。米国防総省は、強力な防空システム、対艦ミサイル、沿岸・戦域戦術ミサイルシステム、電子戦用の装備などで網羅された敵の領域をこのように名付けている。ロシアにおけるA2AD区域はクリミアとカリーニングラード州である。NATO(北大西洋条約機構)は、この地域で軍部隊は想像を超えた損害を被ると考えている。
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/ バルチック艦隊の司令部が置かれるカリーニングラードには、大規模な混成部隊が配置されている。とりわけ、カリーニングラードには戦術ミサイル複合「イスカンデル」が配備されており、欧州のNATO基地および米国のミサイル防衛システムの関連施設を攻撃範囲に含んでいる。また地域には、空からの攻撃に備えて、2つの対空ミサイル旅団と3つの電子戦専門部隊が備えられている。
一方、クリミアは黒海艦隊の基地であり、沿岸防衛用の対艦ミサイルシステムが配備されている。射程は最大500キロメートルで、トルコ沿岸部にまで到達する。黒海に浮かぶあらゆる艦船を潜在的な標的としている。このほか半島には、セヴァストーポリに本部を置く第22軍団が配置されているが、ここには、空からの攻撃に対抗するための最新の防空システムを備えた第1096対空ミサイル連隊が含まれている。防空部隊が、第4航空・防空軍と密接に連携している。
楡林海軍基地(中国)
南シナ海に浮かぶ海南島には中国の主要な極秘の施設がある。この地下基地について米国が初めて報じたのは2008年で、950メートルの埠頭が2つとそれよりやや小さい埠頭4つの衛星画像が公開された。専門家によれば、楡林海軍基地には同時に2つの空母打撃群あるいは大型の強襲陸洋艦を配備することができるとされる。
しかし、もっとも興味深い部分は衛星画像では捉えられていない。主な設備は地下洞窟の中にある。米国防総省のデータによれば、それぞれ12基の弾道ミサイルを搭載した戦略的原子力潜水艦が配備されている。また20隻の潜水艦を配置するのに十分なスペースがあるとも指摘されている。
海南島と楡林海軍基地は、中国人民解放軍の中でももっとも強力な南部戦区の管轄である。しかし、中国政府が南シナ海を自国領であると見なし、米国がこの地域で行動を起こそうとしていることに極めて敏感になっていることを考えれば、こうした動きもまったく驚くべきことではない。