抵抗は大きな報復をもたらす
世界経済国際関係研究所(IMEMO)アジア太平洋研究センターのアレクサンドル・ロマノフ・センター長は、米国が中国に対してこのような構想を導入するのはもう遅すぎると語る。
「2020年代に中国の発展スピードを遅らせようとすることで、結果的に(2030年には)中国がハイテク分野で強力な競合になるという結果を招くことになるでしょう。というのも、米企業が中国への先端技術の供給を停止するという形で米国が中国を脅すのはこれが初めてではないからです。さらに、バイデン大統領にはトランプ氏以上に中国を脅すことはできません。中国はこれまでのことから教訓を得て、米国への技術依存から脱却する準備を早くから進めていました。中国はイノベーション産業の自給自足に取り組み、成功しています。中国ビジネスは、有望な科学技術開発にとって最大の顧客であり、スポンサーでもあります。国家もまた、安全保障に関わることであるため、この分野に惜しみなく資金を供給しており、重要な市場プレーヤーであり続けています。しかし、中国にはもちろんまだ「弱点」が残っています。そのひとつが半導体です。ですから、今、中国はハイテク製品の製造に不可欠なマイクロチップの自国生産に莫大な努力と資源を投入しています。実現は十分に可能ですが、問題は時間です。おそらく、2020年代末には、中国は最先端技術を国内市場向けに生産するのみならず、輸出するようになるでしょう。」
中国の南京大学国際関係研究院の郑安光副院長は、中国へのハイテク供給規制という米国の構想が実現すれば、日本の利益を直撃することになると語る。
「米国は、中国をハイテク保有国の「閉鎖的グループ」から排除することで、中国の発展を抑えようとしています。しかし同時に、米国は、この規制を日本と中国のハイテク製品貿易を抑制するためにも利用するのです。米国は、この分野での優位性を維持するために、日本のハイテク産業の成長にも影響を与えようとしています。しかし、米国や日本のハイテク・イノベーションもまた、中国市場、中国のサプライチェーン、中国の人材を含む重要資源を必要としています。なぜなら、(ハイテクやイノベーション分野のグローバル統合が進んだ)今の時代、グローバル・サプライチェーンから切り離して、自国の技術優位性を維持できる国は一国として存在しないからです。」
そのため、米国と日本の意図はそもそも実現不可能であり、それでも米国と同盟国がこの枠組みを構築するのであれば、それは将来的に自分たちにマイナスの影響となって返ってくるだろうと郑安光氏は言う。
中国はすでに十分すぎるほどに現代のイノベーション空間に適応している。中国がほぼすべてのものをコピーし、製造できるようになって久しい。このことから言えるのは、米国と同盟国の最大の目的は、中国の研究者と西側の接触を制限することで、今後の最新技術の漏えいを防止することにある、とアレクサンドル・ロマノフ氏は指摘する。
しかし、米国のこの路線も中国に深刻なダメージを与えることはないだろうとロマノフ氏は言う。
「中国は世界中と取引しており、完全に開かれています。ですから、中国市場に関心を持つ大多数の国々は(あらゆるリスクを考慮した上で)自らの意志で、米国の禁止措置を回避するする道を模索するでしょう。また、中国はほぼすべての分野で、国内で完結する生産サイクルを持っています。例えば、西側に劣らないエンジンを自ら製造することで、自力で宇宙船や飛行機を製造しています。高速鉄道についても、ずっと以前から重要技術の輸入を必要としていません。」
つまるところ、米国は将来的に(期待したのと)真逆の結果を得ることになる可能性がある。つまり、米国がどんなに中国の首を絞めようと画策しても、そんなものに全く依存しない競争力のある中国が誕生することになる。結局のところ、米国はハイテク分野での中国の科学的飛躍を加速させるだけであり、これは米国のサプライヤーをこのセグメントから徹底的に排除するだけだとロマノフ氏は考える。
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