北朝鮮は極超音速ミサイルを配備するか?

2022年1月、北朝鮮は極超音速ミサイルの発射実験を次々と実施している。北朝鮮のメディアの報道によれば、同国はすでに2種類の極超音速ミサイルを保有しており、現在、その技術の改良を進めているようだ。
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専門家の発表によると、北朝鮮は2種類のミサイルの発射実験を実施した。その詳細は以下の通りとなっている。
1.
1月5日、火星8型、飛行距離700キロ、高度120キロ
2.
1月11日、火星8型、飛行距離1,000キロ、高度60キロ
3.
1月14日、2発の発射、KN–23、飛行距離430キロ、高度36キロ
4.
1月17日、2発の発射、型式は不明、飛行距離380キロ、高度41キロ
さらに付け加えれば、1月11日の発射実験では、最高速度がマッハ10(時速12250キロ)に達した。また1月14日に発射されたKN–23の2つのミサイルは、鉄道を使用した発射台から打ち上げられた。

極超音速ミサイル

極超音速ミサイルとは、大気圏内を速度マッハ5(時速6125キロ)以上で、空気吸引を用いて飛行するものである。このようなミサイルは独自のエンジンを備えている可能性もあるが、備えていない可能性もある。
基本的に、宇宙から大気圏を落下するすべてのミサイルの降下速度は、超音速に達する。つまり、超音速であるのは、ミサイルそのものではなく、その弾頭部である。弾頭部が宇宙空間でミサイルから切り離され、スピードを上げ、大気圏に突入する。

どのような特長があるのか?

第一に、極超音速の弾頭は滑空弾頭であり、通常の弾頭と較べて飛行距離が長い。
第二に、目標に対する命中精度が高い。
そして第三に、飛行速度が高いことから、発見されにくく、迎撃されにくい。またたとえば、イージス・システムが目標物を捉えた場合でも、地対空ミサイルを回避することができる。つまり、極超音速ミサイルを迎撃することは可能ではあるが、しかしかなり好条件が整っていなければならない。
これまでに明らかになっているところでは、現在、北朝鮮は飛行距離の延長と命中精度の向上を目指している。仮に北朝鮮が飛行距離1000キロのミサイルを保有すれば、北朝鮮北部から発射されたミサイルは日本に到達する可能性がある。
北朝鮮がこの極超音速ミサイルの開発を進めている理由は、戦争が勃発した際に、韓国と日本に配置されている米軍基地を攻撃し、米軍および同盟国軍の侵攻を食い止めるためである。日本が攻撃を受ける可能性があるのは、米国と北朝鮮が戦争状態になった場合、後方となるからである。

列車からの発射

一方、KN-23はこれとはまったく異なるミサイルである。KN-23は直径1.1メートル、全長9.8メートル、重量わずか3.4トンの非常にコンパクトなミサイルである。飛行距離は最大で430キロ、非武装地帯付近から発射された場合、対馬海峡にようやく到達する程度となっている。つまり、このミサイルは、日本にとってはまったく危険ではない。しかし韓国全土を攻撃することができるものである。
北朝鮮にとって、このようなミサイルは空軍部隊を補完するものである。米軍と韓国軍には、その規模の面でも技術の面でも大きく差を開けられていることを考えれば、戦争になった場合、北朝鮮の空軍は規模が小さすぎてこれに対抗することができない。しかし、北朝鮮軍は攻勢をかけ続けるため、後方、そして敵が結集しているところに攻撃を仕掛けなければならない。こうした任務を担うのがKN-23である。
鉄道の列車へのミサイル配備は、ミサイルの発射地点への移動を察知されにくくする。また北朝鮮の鉄道を移動する列車の中にミサイルが積載されていることは、レーダーでも衛星でも特定することはできない。つまりどんな工場周辺からも、発射装置からも、そしてどんな駅からも、また鉄道のどんな地点からもミサイルを発射することができるのである。
加えて、北朝鮮では、無数の地下トンネルが建設されていることは疑いようのないことであり、これは敵の空爆からミサイル発射装置を隠すことができるものである。破壊された通路は簡単に復旧させることができる。そのために特別に装備された部隊が創設されているが、必要があれば、手作業で行うこともできる。これは、米国とその同盟国の航空部隊の優位性に対抗するための良好な対応である。これは朝鮮戦争の経験に基づいたものである。
KN-23の発射実験はミサイルの信頼性を高めるために行われているものと見られる。また、北朝鮮はこのタイプのミサイルを大量に生産する計画と考えられている。
しかし、北朝鮮のミサイル開発計画は防衛に焦点を当てたものであり、開戦の可能性を低下させることを目的としている。北朝鮮が他国に先制攻撃をかけることは考えにくい。理由は単純に、激しい戦争になった場合、北朝鮮の敗北は不可避だからである。北朝鮮の軍事的、経済的潜在力は、米国をはじめ、敵となりうる国と比較すれば、あまりにも小さすぎるのである。
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