コーカサスを愛する若者、ダゲスタン国立舞踊団からスカウトされ一躍有名に 日本人初のレズギンカダンサー

黒海とカスピ海をつなぐコーカサス山脈を取り囲むコーカサス地方は、様々な民族と文化、伝統のるつぼである。そんなコーカサスを愛し、コーカサスの民族舞踊「レズギンカ」を独学で学んだジギット野崎ことTaiga Nozakiさんが、若干19歳にしてロシア・ダゲスタンの国立舞踊団から招聘され、話題を呼んでいる。ロシアで日本人のバレエダンサーは数多く活躍しているが、レズギンカダンサーは初めてだ。野崎さんは「趣味を極めて、好きなことを続けていたら、気づいたらこうなった。まだ現実感はないけれど、うきうきした気持ち」 と、喜びを話してくれた。
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もともとコスプレが好きだった野崎さんは、西洋の騎士の鎧を集めたり、甲冑を身につけ武器で戦う「ヘヴィファイト」に関心があった。その流れでインターネットで剣舞の動画を見つけ、コーカサスの人々が、剣とともに美しく舞う姿を目にし、民族衣装の格好良さも相まって、武術から舞踊へと関心が移っていった。現地のダンサーがYouTubeで開講しているレズギンカの講座や、様々な動画を視聴し、ひとりで練習を始めた。当時、野崎さんは高校生。周囲にコーカサスに関心を持つ人はおらず、体育の時間にまで舞踊に関連したトレーニングをしていたため「変わった奴」だと思われていた。
コーカサスの踊りは多岐に渡っている。冒頭で紹介した、優雅で力強い腕の動きとテンポの良い足技が特徴のレズギンカ以外にも、チェルケス人の婚礼の踊り「イスラメイ」、オセチア、チェチェン、イングーシ、ダゲスタン各共和国における各民族の踊りなど、北コーカサスにおける野崎さんのカバー範囲は広い。先日、横浜で行われた新年イベントでは北コーカサス伝統の剣舞を披露し、喝采を浴びた。
南コーカサスの踊りにも関心があり、アゼルバイジャンの結婚式の踊りに挑戦したり、ジョージアンダンスの日本における第一人者・野口雅史さんから指導を受けたり、ジョージアンダンス倶楽部に参加したりと、幅を広げている。それぞれのダンスには共通した動きも多く、野崎さんは、ジョージアンダンスで学んだ動きをレズギンカの独習に応用することもある。また、レズギンカというジャンルそのものを日本人に知ってもらおうと「レズギン会」を立ち上げ、友人知人を誘って公園でレズギンカを踊ったりしている。
趣味を追求していった結果、踊りはかなりのレベルに達した。そんなある日、SNSでシェアした踊りが思いがけずダゲスタンの国立舞踊団の目にとまり、なんと舞踊団のディレクターで、ロシアの芸術功労者ジャンブラト・マゴメドフ氏からスカウトが来た。最初は信じられなかった野崎さんだが、そのタイミングでロシアメディアからの取材要請が次々と舞い込み、ようやく本物のスカウトだと認識できた。野崎さんは「僕はコーカサスに行って、現地の劇場で踊って、日本人初のジギット(コーカサスにおいて馬と武器を使いこなす武士のようにタフな男性)になる」と常々周りの人に話してきたが、まさにその言葉が現実になるチャンスが来たのだ。
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野崎さんのダンスは現地のテレビで何度も放送され、まだ渡航しないうちから野崎さんのSNSのアカウントにはコーカサスの住人をはじめとした人々からファンメッセージが寄せられている。特にツイッター上では、すっかり人気者になった。
「前世はコーカサス人だったかも」と話す野崎さんの夢は、渡航したら現地に溶け込み、コーカサス各地の専門家からその土地に伝わるダンスを習い、全ジャンルを網羅して踊れるダンサーになることだ。野崎さんの新天地となるダゲスタン共和国は、カスピ海沿岸に位置し、ひときわ多くの民族が共存する中で独自の文化が発展した、ロシアの中でもとりわけユニークな地域である。馬とダンスで共演するなど、機会があれば他でやれないことをやってみたい、と意欲に燃えている。
現在、野崎さんは、ロシア渡航の準備を少しずつ進めている。コロナ拡大など様々な不安要素がある中、健康面での不安をできるだけ解消し、ロシア語の学習など日本でできる準備をしっかりと進め、時が来れば現地で踊りに集中するつもりだ。
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