五輪開催後の世界選手権は、他のシーズンよりも出場者が少ないことが多い。五輪メダリストは、休息や怪我の治療のためにしばしば出場を見送ることがあるためだ。今回、羽生結弦とネイサン・チェンが怪我のため欠場したが、男子シングルは宇野昌磨と鍵山優真の出場により最高の技術レベルを維持した。アイスダンスにもトップチームがほぼ全て出場。五輪で金メダルを獲得したフランスのガブリエラ・パパダキス/ギヨーム・シゼロン組は期待通り、母国で金メダルを獲得した。北京五輪のメダリストのうち、2021年の世界選手権を制し、五輪銀メダルを獲得したニキータ・カツァラポフ/ヴィクトリヤ・シニツィナ組だけが不在となった。
一方、ロシア人選手の出場停止および中国人選手の欠場により、女子シングルとペアでは、ほぼすべてのトップ選手たちが不在となった。最新のISUランキングがこれを裏付けている。
ISU 2021/2022 女子シングルのランキング
1.アンナ・シェルバコワ(ロシア)4419 pt — 世界選手権出場停止
2.アレクサンドラ・トルソワ(ロシア)3646 pt — 世界選手権出場停止
3.坂本花織(日本)3423 pt — 世界選手権2022金メダル
4.ユ・ヨン(韓国) 3254 pt — 世界選手権2022第4位
5.エリザヴェータ・トゥクタミシェワ(ロシア) 2923 pt —世界選手権出場停止
6.アリサ・リウ(米国)2806 pt — 世界選手権2022銅メダル
7.カミラ・ワリエワ(ロシア)2745 pt — 世界選手権出場停止
8.ルナ・ヘンドリックス(ベルギー)2672 pt — 世界選手権2022銀メダル
9.アリョーナ・コストルナヤ(ロシア)2565 pt — 世界選手権出場停止
10. カレン・チェン (米国) 2553 pt — 世界選手権2022第8位
ISU 2021/2022 ペアのランキング
1.アナスシア・ミシナ/アレクサンドル・ガリャモフ組(ロシア) 4391 pt — 世界選手権出場停止
2.エフゲニア・タラソワ/ウラジーミル・モロゾフ組(ロシア)3953 pt — 世界選手権出場停止
3.隋文静/韓聡組(中国)3920 pt — 世界選手権欠場
4.アレクサンドラ・ボイコワ/ドミトリー・コズロフスキー組 (ロシア) 3259 pt — 世界選手権出場停止
5.アシュリー・ケイン/ティモシー・ルデュク組 (米国) 3000 pt — 世界選手権途中棄権
6.アレクサ・クニエリム/ブランドン・フレイジャー組(米国)2929 pt — 世界選手権2022金メダル
7.彭程/金楊組(中国)2888 pt — 世界選手権欠場
8.三浦璃来/木原龍一組(日本) 2712 pt — 世界選手権2022銀メダル
9.ミネルヴァ・ファビアン・ハーゼ/ノーラン・ジーゲルト(ドイツ) 2633 pt
10. カーステン・ムーア=タワーズ/マイケル・マリナロ(カナダ) 2513 pt
このように、女子シングルとペアでは、最有力候補選手らが不在だったことがわかる。
このような状況の中、日本代表チームは世界選手権でメダルを獲得した。日本人選手らは自身の史上最高の結果を叩き出し、4つのメダルを獲得した。米国代表チームは、過去56年間で最高の演技を披露。1966年の世界選手権で5個のメダルを獲得して以来だ。
2021年、ストックホルムで開催された世界選手権では、ロシア人選手らがメダル獲得数で1位となった。ヴィクトリヤ・シニツィナ/ニキータ・カツァラポフ組(アイスダンス)、アンナ・シェルバコワ(女子シングル)、アナスタシヤ・ミーシナ/アレクサンドル・ガリャモフ組(ペア)が金メダルを獲得した。エリザヴェータ・トゥクタミシェワが銀メダル、アレクサンドラ・ボイコワ/ドミトリー・コズロフスキー組(ペア)、アレクサンドラ・トルソワ(女子シングル)が銅メダルを獲得した。米国代表チームは、金メダル1つと銀メダル1つとメダル獲得数では2位。日本代表チームは、銀メダル1つと銅メダル1つでメダル獲得数では3位だった。
このような輝かしい成績を残しながらも、2022年の世界選手権ではロシア人選手らは不在となった。その一方で、ロシア人選手らのプログラムや現在の姿は「チャンネル・ワン杯」で見ることが可能となった。
「チャンネル・ワン杯」は1カ国のアイスショー?それとも一大スポーツ?
では、世界選手権とロシアの「チャンネル・ワン杯」でのショートプログラム(SP)とフリースケーティング(FS)における選手たちの要素と得点を比較してみよう。
女子の試合は、依然としてロシアのフィギュアスケートの主な強みである。「チャンネル・ワン杯」での女子ショートプログラムでは、エリザヴェータ・トゥクタミシェワだけがウルトラC要素を披露したが、やはり同チームのカミラ・ワリエワとアンナ・シェルバコワよりは低い結果となった。ワリエワは、トリプルアクセルの代わりにダブルアクセルを跳んだ。今シーズン中、ウルトラCジャンプがワリエワを苦しめることはほぼなかったが、五輪で乱れてしまった。五輪のフリースケーティングは、このジャンプのミスをもって始まったのだった。
五輪の団体戦および個人戦の覇者であるワリエワとシェルバコワは、ショートプログラムでは予想に反して0.73点差となった。これは、ワリエワが今シーズンで初めてアクセルをトリプルにしなかったためだ。ウルトラCジャンプ無しでも、ワリエワは従来みられたショートプログラムの要素(ダブルアクセル、トリプルフリップ、トリプルルッツ–トウループの連続ジャンプ)で、シェルバコワを上回った。
トリプルアクセルを跳んだトゥクタミシェワは、ワリエワとちょうど2点差。トゥクタミシェワのファンは、審査員の評価が偏っていると踏んだ。
ここ数日、ファンはウルトラCのない世界選手権女子シングルからはそっぽを向けている。トリプルアクセルを跳んだのはリーザだけなのに3位になった…
ウルトラCのない坂本、ショートで唯一トリプルアクセルを跳んだトゥクタミシェワは3位。正気か?
残酷だが、ワリエワの記録を更新するのはもうチャンネル・ワン杯だけだ。
得点は、有利に働く国内審査員の存在など多くの要因に左右されるため、国内大会と国際大会で得点を比べることはあまりない。
世界選手権のフリーでは、3人の選手がウルトラC要素に挑み、アリサ・リウ(銅メダル)とユ・ヨン(4位)の2人が成功した。「チャンネル・ワン杯」では、女子選手の中でより難しいジャンプが大幅に増えた。そして、トゥクタミシェワは、トリプルアクセル2本をクリーンに飛んだ。ダブルトウループとの連続ジャンプと単独でのジャンプだ。シェルバコワは4回転フリップを跳び、ワリエワは4回転トウループを跳んだ。マイア・フロミフは2つの4回転トウループに挑んだが、2つとも転倒。ジュニアのアデリア・ペトロシャンも4回転フリップ、4回転ルッツ、4回転トウループを決めることはできなかった。
ジュニアのソフィア・サモデルキナはトリプルアクセルをクリーンに跳んだものの、4回転サルコウでミス、4回転ルッツはステップアウト、もう1つの4回転ルッツは転倒となった。サモデルキナは、カルメンの音楽で演技した。アリーナ・ザギトワは、サモデルキナがカルメンを選んだことに対し「カルメンを選んでくれてありがとう!これは勝利の曲だと私は思う」とコメントした。