「高まるアジアへの注目度」アジア太平洋地域における新たな米軍基地に対する専門家らの意見

米国防総省は、アジア太平洋地域に米軍の新たな即応部隊(地上軍)を配備する可能性がある。
この記事をSputnikで読む
部隊は試験的なものとしてハワイに配備され、最終的には、5つの新たな即応部隊が世界のさまざまな場所に配備される可能性がある。これについて、米軍のジェームス・マコンヴィル将軍は、ワシントンの軍事評論家グループとの会合で、配備には一定の時間が必要となると述べている。
米国にこのような軍備を配置させることなったきっかけは何なのか、またどのような状況においてこれらの部隊が任務を遂行することになるのか、「スプートニク」が専門家にお話を聞いた。
よく知られているように、米軍司令部は軍部隊を、米軍地上部隊の多目的即応部隊と位置付けている。こうした部隊は、超音速ミサイルから中距離ミサイルに至る高性能の長距離兵器を保有することになる。これ以外にも、部隊には、偵察、情報作戦、サイバー空間での軍事行動、電子戦、宇宙兵器、ミサイル防衛など、あらゆる兵器が装備されることになる。
軍事専門家で、ジャーナリストのアレクセイ・レオンコフ氏は、米国にとってのアジア太平洋地域の地政学的意義はますます強まっており、そのことは、この地域に軍備を整えるための莫大な投資という形として反映されていると指摘する。
「米国は、アジア太平洋地域を重要なものと考えています。というのも、ロシアが、中国、ベトナム、ラオス、バングラデシュなど、アジアの多くの国々と良好な関係を維持しているからです。その関係は、ソ連がアジア太平洋地域に大きな存在力を持っていたときから続いているものです。そして米国はこうした古くからの関係によって、ロシアが過去の影響力を急速に増大させることを恐れています。現在、中国とロシアが接近していることから、こうした状況は特に米国の懸念を呼び起こしています。アジア太平洋地域における米国の大規模な軍事プログラムは、すでにかなり以前から実現されつつあるもので、現在、そのプログラムが修正されているにすぎません。現時点で米国は、有効な防衛網を築くため、とりわけこの地域における中国の野望を抑止するために、この方向における行動を強化しているのです。ですから、中国が懸念し、世界最大の艦隊の創設を進めていることも無駄なことではありません」。
軍事政治分析局のアレクサンドル・ミハイロフ局長は、ウクライナにおける紛争が激化しているにもかかわらず、米国がその注意を欧州からアジア太平洋地域に移していることはますます明白になってきていると指摘する。

「米国は東欧でロシアとの長期的で複雑な紛争を引き起こし、地域全体をこの紛争に巻き込んでいます。しかも、この紛争の結果は、欧州が長年にわたって収拾していかなければならなくなるものです。これから数百万人の避難民が欧州に押し寄せ、また燃料エネルギーの問題を抱えることになるからです。このような状況となった今、米国は、落ち着いた心持ちで、外交ベクトルをアジア太平洋地域に向けることができるわけです。米国は、米国にとって新しく、また優先的な地政学的シナリオ―つまり中国との対立を実現するため、アジアでの存在をさらに強めていこうとしています。何よりも、近代兵器を集中させている規模から見てもそれは明らかです。米国は、中国が事実上、極超音速兵器の開発において米国を追い抜くことを非常に恐れています」。

3月、米国は西海岸沖で、爆撃機B-52から極超音速巡航ミサイルを発射した。ロッキード・マーティン製HAWCの実験成功は初めてとなった。
つまり、米国にとって、現在は、アジア太平洋地域での軍備強化に向けて、もっとも都合のよいタイミングなのである。ミハイロフ氏は、米国はこれまでのように、欧州とウクライナだけに注意を集中させ、アジア太平洋での動きを緩めることはできないとの見方を示している。

「米国は事実上、中東から去り、また近い将来、欧州にウクライナ紛争という問題と『1対1』で対処させ、自らはそこからも去ることになります。そして、今度はアジア、太平洋地域、インド太平洋地域全体に、その注意をシフトさせるでしょう。米国はかなり以前からアジアに存在しており、もっとも重要なときに、その地域を中国に明け渡し、それを『失う』ことなどできません。軍事面においても、経済面においてもです。なぜなら、将来的には、他でもないこの地域に主な世界市場がここにでき、米ドルが優先されるかつてのものとは異なる新たな経済が構築されるからです」。

もちろん、米政府は、アジア太平洋地域が中国と中国元の影響下にある地域となることを許すわけにはいかないのである。
このように、米国は、軍事的な脅威によってのみならず、今後の経済的利益を考慮し、この地域において強固な軍事潜在力を確保しようとしているとアレクセイ・レオンコフ氏は指摘する。
「というのも、アジア地域は、米国が南極大陸で行おうとしている(かなり遠い将来ではあるものの)鉱物資源の採掘を『カムフラージュ』するという使命を持っているのです。これは、米国、英国、豪州による新たな3カ国軍事同盟であるAUKUS創設の主な理由でもあります。豪州の新たな軍事基地のすべてが南海岸に位置しているのは偶然ではありません。他でもないこの軍備が、アングロサクソン―つまり米英にとっての経済利益の地域としての南極大陸を守ることになるのです」。
今のところ南極条約議定書(マドリッド議定書)は南極大陸における商用目的の資源採掘を禁じている。そこで、南極大陸での採掘について公言している国はまだない。しかしながら、多くの国が時宜よく、南極大陸そして北極大陸での自らの影響力を拡大しようとしている。
というのも、研究者らによれば、氷の下には、計り知れない資源が大量に埋蔵されているからである。その規模は、石油と天然ガスの埋蔵量だけでも、360億〜2,000億バレルに達する可能性がある。それ以外にも、南極大陸にはダイアモンド鉱脈がある。しかし、南極大陸の主要な宝といえば、淡水である。南極の氷山には、世界の貯蔵量の70%が集中しているのである。
つまり、米国が、NATO諸国がその「中核」を担う幅広い軍事政治連合の修正を行うのには、多くの理由がある。一方、その他の産業先進国(日本、豪州、韓国)は、アジア太平洋地域の「東陣営」となる。この東陣営の国々は、現在、もっとも重要なものである。なぜなら、米国は中国というもっとも重要な戦略上の敵と対峙する必要があるからである。
関連ニュース
米国で新型「ドゥームズデイ・プレーン」が発表
米国、3月に超音速ミサイル実験を密かに実施=マスコミ
コメント