このように、国際社会からロシアを排除しようとする動きは強まっており、ロシア政府(またロシアの多くのメディアが遮断されていることも含め)が自国の立場を国際社会に伝える機会はますます狭まっている。
こうした岸田首相の発案が西側に支持されるのか、またこれがロシアにとってどれほど危機的なものなのか、ロシア政府は国連安全保障理事会のような、国際的な対話のための重要な場を失ってもよいと考えているのか、「スプートニク」が専門家に話を聞いた。
ロシア科学アカデミー世界経済国際関係研究所、国際政治問題部門の学術研究員であるアレクサンドル・アリョーシン氏は、G20という政治的協議のあり方はもっとも適したものであるとは言えないと指摘している。
「G20という協議の形式は1990年代末に、アジアで発生した深刻な金融危機(1997〜1998)に対処するために生まれたものです。西側諸国(G8)はそれにどのように対処すべきかを知らなかったのです。というのも、アジア(急速に経済発展を遂げた地域)の国々は、国際社会に十分に知られていなかったからです。しかし、G20という新たな形式は、2008年の危機後になって、経済問題について協議するための完全な世界的機構となりました。つまり、再び、危機を打開するために協力する必要に迫られた世界経済における新たな脅威の国際舞台において、この組織が真に重要なものとなったのです。
この組織における政治上の発案について言えば、いくつかの国は実際、ときおり、そうした提案をおこなっていますが、妥協点を見出すのは困難な状況です。そこでやはり経済が優先的なものになっています。しかも、G20というのは、具体的な憲章を持つ国連安保理と異なり、非公式の国際フォーラムなのです」。
しかしながら、これより前、ブルームバーグは消息筋からの情報として、米国がホスト国のインドネシアに対し、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領をG20サミットに参加させないよう圧力をかけたと伝えていた。ブルームバーグはまた、ロシア大統領がG20サミットに参加する権利を有した場合、いくつかの国の首脳が参加を拒否し、より低いレベルの代表団を派遣するとしている。
これが首脳を排除するものであるという事実を考慮した場合、米国とその同盟国が、国連安保理においても、ロシアを封鎖するような試みが行われる可能性はあるのだろうか。
「西側は一体どのようにしてロシアを排除するのでしょうか。なぜなら、すでに排除してしまっているのです。たとえば、ロシアは国連人権理事会からも排除されています。しかし、国連安保理でロシアに対して同様の措置を取ることはできません。というのも、国際法というものがあり、基本原則があり、個々の国の希望でそれを書き換えたり、撤廃することはできないからです。国連安保理には15カ国が加盟しており、そのうちの5カ国は常任理事国(ロシア、米国、英国、フランス、中国)で、拒否権を有しています。国連安保理のすべての決議案は10カ国の賛成により採択され、そのうちの5カ国を常任理事国が占めなければなりません。もちろん、ロシアは、ロシアをこの国際組織から排除するというような反露的な決議には賛成しません。最初からそのように「決められて」おり(第二次世界大戦後)、改革を行うには、常任理事国の5カ国が一致した協力を行わなければならないのです」。
一方、ロシア科学アカデミー世界経済国際政治研究所、アジア太平洋研究センター日本経済政治グループを率いるヴィタリー・シヴィトコ氏は、岸田首相の発言を、岸田氏個人の発案であり、公式な声明であると考える根拠はないと指摘している。
「岸田首相は、日本はロシアに対する西側の集団的な立場に同調しているとして、記者からの質問に答えたに過ぎません。そしてこの発言に、何ら新しい見解はなく、ただ事実を述べただけだと考えます。岸田首相は、新たな日本の提案を何らおこなったわけではありません。そしてこれは十分理解できることであり、正当なことです。というのも、現在、日本とロシアの間では漁業問題をめぐって複雑な協議が行われているからです。日本政府にとって、余計な問題を増やし、この問題の進展を複雑なものするのは得策ではないのです。ちなみに、ウクライナのアゾフ大隊をテロ組織から除外するというのも、日本の発案ではありません。これはウクライナ大使館が要求したもので、日本政府は、完全なウクライナからの情報によって、その要求を承認したに過ぎません」。
そんな中、ロシアのドミトリー・ペスコフ大統領報道官は、プーチン大統領がG20サミットに参加するかどうかの決定については、今後の状況次第であると述べている。そしてロシア政府は、その場合は、ホスト国のインドネシアの考えを第一に考慮するつもりだとしている。
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