ツチクジラは北太平洋のツチクジラ(Berardius bairdii)と南半球のミナミツチクジラ(Berardius arnuxii)の2種が正式に認められていたが、日本の捕鯨関係者のあいだではずいぶん前から北海道近海に別の種類のツチクジラがいることが知られており、日本の研究グループは2019年、ツチクジラの新種を発見し、「クロツチクジラ」(学名Berardius minimus、英名Sato's beaked whale)と命名したことを発表した。
極東ロシア・オルカプロジェクト(FEROP)は2020年、サハリンと南クリルの沿岸に漂着したクジラの中からクロツチクジラ3個体を発見したという論文を発表した。
最近まで生きているクロツチクジラに関する信頼できる目撃情報は、ロシアの海域だけでなく世界中で記録されていなかった。
2021年にはモスクワ国立大学とベリンギア国立公園の遠征隊が、クナシルスキー海峡(根室海峡)での海洋調査中に、自然界のクロツチクジラの群れを世界で初めて目撃した。
学者グループは一頭のクジラから遺伝子サンプルを採取し、実験室で解析した結果、新種のクロツチクジラであることが確認された。
専門家によると、クロツチクジラは、アカボウクジラ科(Ziphiidae)の中で最も研究されていない属の1つ。主として深海大洋域や大陸棚斜面に生息するため、めったにみられない。また腹部が薄く、大きな水しぶきを上げないため、見つけづらいという。
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