フィンランドとスウェーデンのNATO加盟:エルドアン大統領が「待った」をかけた理由

トルコのエルドアン大統領が、フィンランドとスウェーデンのNATO加盟について肯定的な見方をしていないと発言したことについて、専門家らは、これはトルコの真の立場を反映したものではなく、自らの利益を追求するトルコと米国の「取引」の始まりを意味するとの見方を示している。
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取引のとき

トルコのエルドアン大統領が、トルコがスウェーデンとフィンランドのNATO加盟を承認しないと表明したのは5月13日のことである。こうした立場を示した理由について大統領は、この2つの国が、「テロ組織の温床」であり、トルコで禁止されているクルド労働者党(PKK)を支援しているからだと説明した。しかし、ロシアの政治学者アンドレイ・マルティンキン氏は、この大統領の感情的な発言の裏には、自らの利益のための西側諸国との「取引」の始まりが見え隠れすると指摘している。そしてこうした状況において、米国が支援しているクルド人が「交渉のためのコイン」となる可能性がある。
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マルティンキン氏は、スウェーデンもフィンランドもトルコ大統領の批判の標的ではないと推測する。米国とNATOがクルド人労働者党およびシリア北部のクルド人部隊の支援をやめるという要求に応えれば、トルコはこの2カ国のNATO加盟に賛成票を投じるだろう。というのも、トルコはこの地域を独自にコントロールしたいからである。マルティンキン氏はまた、これはエルドアン大統領の賢明なやり方であると指摘している。というのも、米国が自らの同盟国を見捨て、アフガニスタンから無様に撤退したあと、多くの人が、米国が次に見捨てることになる同盟国はクルド人だと予見していたからである。マルティンキン氏はまた、トルコは、スウェーデンとフィンランドのNATO加盟に同意するのと引き換えに、トルコのEU (欧州連合)加盟をもう一つの条件として提示してくる可能性も除外できないとしている。
マルティンキン氏はさらに、トルコが、米国とNATOに、事前に非公式な形で提示した条件を整えさせる時間を与えるため、投票を前に自らの不満を述べた点にも注目している。

3つの主な脅威

この問題について、「スプートニク」はトルコの専門家らにも取材した。退役海軍少将のジェム・ギュルデニズ氏は、トルコには、米国とNATOと取引する価値のある自らの利益があると打ち明ける。現在、トルコは3つの大きな危機に直面している。1つ目はトルコ南東部にクルド人の傀儡政権が樹立されるという脅威、2つ目は北キプロス・トルコ共和国に対するNATOの非友好的な行動に関するもの、そして3つ目が、ロシア・トルコ間の軍事紛争を扇動しようと、NATOが積極的に黒海に入ろうとしていることにより、領海で緊張が生じていることである。ギュルデニズ氏は、トルコは自らの地政学的利益が保障されない限り、NATOのあらゆる決定に機械的に同意するべきではないと主張する。

重要な要求

トルコ外交関係・政治研究センターのトルガ・サクマン所長は、「スプートニク」からのインタビューに対し、NATOのような防衛同盟において、国の安全保障に関する問題の解決に向けたトルコの要求は、まったく理に適ったものとして捉えられるべきだと述べている。サクマン氏は、「トルコの外交がトルコの利益のために大きく飛躍できる時期がきた」との考えを示す。この飛躍という言葉についてサクマン氏は、米国とNATOとの政治的・軍事的協力の強化、そして防衛産業分野での制裁の解除を意味すると指摘している。
制裁の解除というのが、実は米国に対するトルコの重要な要求である可能性がある。
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ここで指摘しておくべきなのは、2019年にトルコはロシアから4つの地対空ミサイル防衛システムを購入し、25億ドルを支払ったことである。こうした行動がNATO諸国の政策に反することは明白である。これに対し、米国はトルコに対する制裁を発動し、その結果、米国の新たな戦闘機F-35の購入の契約は凍結された。
5月19日にトルコとメヴリュット・チャヴシュオール外相と米国のアントニー・ブリンケン国務長官が会談したあと、米国とNATOはトルコが示した要求に何らかの形で注意を向ける必要に迫られたとみられる。
トルコ外相が述べたところによれば、ブリンケン国務長官との会談は「きわめてポジティブな雰囲気で」行われたという。一方、ブリンケン長官は、NATO拡大問題に関するトルコの懸念は根拠のあるものだとの理解を明確にした。
トルコ政府が、スウェーデンとフィンランドのNATO加盟を支持するための5つの条件を挙げたというニュースは「スプートニク」の過去の記事よりお読みいただけます。
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