ウクライナでの露特別軍事作戦

ロシアのウクライナに対する立場を示す特別展、勝利博物館で開催中 来場者から高い関心

モスクワにある、大祖国戦争(第二次世界大戦における独ソ戦)の勝利をたたえ、当時の様子を伝える勝利博物館で、ロシアのウクライナに対する立場を端的に表す特別展「いつものナチズム」が開催されている。4月19日に特別展がスタートして以降、1か月でおよそ15万人が訪れた。筆者が訪れた5月9日は、大祖国戦争の勝利記念日ということで、博物館には行列ができるほど大勢の人がつめかけていた。
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勝利博物館は、大祖国戦争50周年にあたる1995年5月9日、モスクワにオープン。展示手法に最新技術が使われた、市民に人気の博物館だ。博物館の入り口そばには「仲よし三國」と題した日独伊三国同盟のプラカートがある。
特別展「いつものナチズム」では、「ウクライナバージョン」のナチズムについて語る、歴史的資料や写真などおよそ200点が展示されている。展示スペースはあまり大きくなく、展示は過去と現在の2つのブロックにわかれ、右側には第二次世界大戦中、ドイツに占領されていたウクライナの歴史について、左側には、ロシアの目から見た、この8年間のウクライナでの出来事について展示されている。
対独戦勝記念日、市民パレード「不滅の連隊」現地ルポ 顔のないプラカート、両親の思い出の写真
過去のゾーンでは、OUN(ウクライナ民族主義者組織)とUPA(ウクライナ蜂起軍)がナチスの共犯者であること、OUNが1929年に創設され、テロ行為を目的達成の手段として容認してきたことを紹介し、リヴィウ・ポグロム(1941年に現ウクライナのリヴィウで起きたユダヤ系住民殺害)やヴォルィーニの悲劇(1943年から44年にかけて現ウクライナ北西部で行われた5~6万人のポーランド系住民殺害)によって、犠牲になった一般人の写真が複数展示されている。
展覧会来場者
現代のゾーンでは2014年から2022年にかけての出来事を「現代のナチズム」と題している。OUN の有力な指導者だったステパン・バンデラの記念日にちなんで行進する人々や、大学や公共の場でのロシア語の法的な禁止や制限について紹介され、2014年から8年間続く「ドンバス戦争」において、およそ1万4千人が犠牲になったこと、マイダン革命以降に複数の「大隊」が形成され、それらがウクライナの「主要な攻撃力」になったことが語られている。
展示スペース中央にはブランコとぬいぐるみを使ったインスタレーションが設置されており、その上には犠牲となった子どもの名前が入った、たくさんの天使が飛んでいる。
ウクライナでの露特別軍事作戦
モスクワでNATOの残虐性を語る展覧会開催中、ウクライナから持ち帰った軍服や広島長崎の展示も
展覧会全体を通して主催者は、かつて民間人殺害に手を染めたOUNと、ナチスドイツのイデオロギーを復活させた現代ウクライナの民族主義組織との関係を、不可分なものとして訴えている。
ドンバスで犠牲となった子どもの名前と年齢が書かれたインスタレーション
スプートニクではこれより前、同じくモスクワで行われている特別展「NATO:残虐性の年代記」(現代史博物館)をご紹介した。この特別展では、米国による広島および長崎への原爆投下は、主に心理的な効果を狙ったものであり、ソ連に対して核兵器の威力を見せつけることが主目的の一つだったと語られていた。原爆投下は、ソ連と米国が袂を分かつきっかけとなったのである。
展覧会「いつものナチズム」を訪れた日本人男性は「どういうロジックで今の状況になったのか、ロシア側の立場を整理・理解するのに役に立った」と話した。同展は、7月17日まで開催される。
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