これまでの研究では、ベスビオ火山の噴火による犠牲者や動物の化石から短いDNAであるミトコンドリアDNAの解析は行われていたが、全ゲノムの塩基配列の決定はこれが初めてとなる。
コペンハーゲン大学(デンマーク)の研究者らが解析に成功したのは、「職人の家」とよばれる場所で見つかった男性のゲノム。その場所では女性の化石も見つかっているが、遺伝子の塩基配列の多くが欠落しているために、解析をすすめることができなかった。
この男性の年齢は、35歳から40歳と推定されている。今回の解析で、この男性のDNAは、イタリア中部の現代人と古代ローマ時代に生きていた人々と最も類似していることが判明した。
さらに研究者らがこの男性の骨格を分析したところ、脊椎骨の1つに病変を確認し、DNA配列からこの男性が生前に結核を患っていた可能性があることが分かった。一方で女性の年齢は50歳以上だと推定されており、変形性関節症に悩まされていたとみられている。研究者らは、この2人が噴火の際に持病のために避難せず、自宅に留まった可能性が高いと指摘している。
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