1991年の湾岸戦争に参戦した米国の退役軍人69万7000人のうち約25万人が慢性疼痛を患っているが、具体的な原因はまだ十分に解明されていない。研究者らは今回、慢性疼痛を患っているケースと患っていないケースの米国の退役軍人の脳をMRIで調べた。またこれらの退役軍人には症状、倦怠感、気分を調査するアンケートに答えてもらった。
その結果、慢性疼痛を患っている人のMRI画像では、島皮質(大脳皮質の一領域)の左右の灰白質の体積が著しく減少していることが分かった。痛みの感覚を調節しているのは、まさにこの島皮質だという。一方で、痛覚と感情調節を司る大脳皮質の前頭葉が大きくなっていた。また、こういった大脳皮質の変化と倦怠感や気分との間に全く関連はなかった。
研究者らは、米国の退役軍人が患う慢性疼痛は、神経障害や痛みを感知する受容体の機能だけでなく、中枢神経系が変化している点も関係しており、治療の問題をより難しくしている可能性があると結論づけている。
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