中国軍は、兵員に年間平均で11万2700ドルを費やし、自衛隊は現時点で平均16万1900ドルを計上しているが、首相の提案ではこれが年間29万9500ドルに引き上げられることになる。
今のところ、自衛隊員の増員に関する問題は提起されていないことから、防衛費の増額は、兵器の刷新に充てられるものと考えられる。そしてこの兵器の刷新は、戦闘が行われる可能性があると想定される敵国に、軍備で質的に上回ることを目的としたものである。
日本は必要のない戦争に巻き込まれる可能性がある
このように、日本は、自衛の原則を違反することなく、しかし自らの意思に反して、戦争に巻き込まれる可能性がある。米軍は地域にも、日本国内にも配備されており、とりわけ、中国と北朝鮮を敵対する陣営に分けるようなかなり以前に起こった政治的対立の結果、置かれたものである。米国は韓国と台湾を支持すると表明した。そして、米軍部隊の存在と世界最強の軍事大国との軍事紛争の可能性が生まれたことにより、この対立は凍結された。
しかし、対立は解決されたわけではなく、今もくすぶり続けており、いつ爆発してもおかしくない状態となっている。地域のパワーバランスは近年、中国と北朝鮮に有利な方向で変わりつつある。このことにより、古い政治的対立を力によって解決しようとする試みの条件が生み出された。
もしこの対立が再燃すれば、日本はある瞬間、国内にある米軍基地へのミサイル攻撃を受け、本質的には、日本にとっては必要のない戦争に参戦せざるを得なくなる。
こうしたことから、日本の自衛政策は、最新の航空機、艦船の購入だけでなく、地域でくすぶる紛争を平和的に解決するための外交的努力に基づくべきだという結論を導き出すことができる。
朝鮮の愛国者会議
これらの対立のうちの一つに日本は直接関与している。これは南北朝鮮間の対立である。これは朝鮮が日本の統治下にあった時代に生まれたものである。朝鮮の愛国者らはその時2つの集団に分かれた。一方の集団は、絶対に日本と軍事紛争を起こすべきだと主張したが、後に、その集団のリーダーとなったのが金日成氏である。
金日成とイワン・チスチャコフ
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もう一つの集団は、一時的に日本に従い、日本に学び、その後、日本の影響力から離れて、強い朝鮮を作ろうと考えた。この集団のリーダーだったのが韓国の初代大統領、イ・スン・マンである。
イ・スン・マン
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2つ目の集団を支持した者の間には、日本政府のために働いた朝鮮人が大勢いた。たとえば、韓国の3人目の大統領となったパク・チョンヒは日本陸軍士官学校を卒業し、高木正雄という日本名で満州軍第8団(連隊)副官となったという事実を挙げるだけで十分だろう。1つ目の集団のメンバーらは、もう1つの集団を裏切り者と嫌悪し、2つ目の集団のメンバーらは1つ目の集団を悪党、人殺しだと非難した。
この話には特筆すべき2つの問題がある。
1つめは、日本による朝鮮半島統治は77年前に終わったというのに、朝鮮の人々はまだ許容することができないということである。
2つめは、朝鮮の愛国主義的な2つの集団は、どちらも正しく、どちらも素晴らしい成功を収めたということである。
韓国は非常に発展した国となり、北朝鮮は軍備の整った国となった。言い換えれば、現在の状況において、両者の間が敵意を持つための根拠はもはやなくなったということである。日本の天皇が、より権威ある存在として、次のような提案をすればよいのではないか。それは、朝鮮半島の2つの国が「愛国主義者会議」のようなものを実施する必要があり、両者の希望があれば、東京で開催することもできるというものである。この会議では次のような問題について検討されるべきだろう。
まずは日本帝国がかつて適用した侵略、戦争、強奪という手段は何らよい結果をもたらさなかった。そして日本は、そのような政策によって、自らに膨大な犠牲者と破壊をもたらしたということ。次に、日本、中国、韓国、台湾、そして時に北朝鮮の戦後の経験により、平和的で経済的建設と連携が、何よりも有益であることを露呈したということである。これにより、敵意と暴力は1930年代の政治的モデルの手法であり、現在このようなやり方は通用しないということが分かる。
第3に、韓国と北朝鮮は朝鮮半島の整備で疑いようのない貢献を果たし、大きな成果を出したということ、またいずれの国も愛国主義的な国であり、それを何度も証明してきたということ。つまり、2つの国が互いを認め、和平と不可侵の協定を結ぶことは、目的に適ったことなのである。その後、両国は、過去の出来事すべてに遺憾を表明し、平和的な関係の建設を始めればよいのである。日本にとって、朝鮮半島の対立の解決は、巻き込まれる可能性がきわめて高い戦争勃発の可能性を大きく低減するものである。
これは政治的・外交的手段によって目的を達成しようとする自衛なのである。