西川教授は今回の事件の動機について、第2次世界大戦前夜に日本で起きた2つの首相暗殺事件と対比させ、次のように分析している。
「今回の事件にたいへんな衝撃を受けています。日本の戦後政治史上最悪の事件だと思います。元海上自衛隊員による犯行とのことですが、動機についてはまったく予想だにできません。
戦前、五・一五事件(1932)で犬養毅首相が、二・二六事件(1936)では岡田啓介首相と誤認された秘書が、前者は海軍の、後者は陸軍の青年将校によって暗殺されました。これらは現体制に不満を持つ軍部の一部による犯行・クーデタ未遂ということで、動機も明らかにされています。
一方、今回の件ではそのような組織的背景があるとは考えにくく、よもや海上自衛隊によるクーデタ未遂のはずはありません。実行犯による単独行動ではないかと推測します」
戦前、五・一五事件(1932)で犬養毅首相が、二・二六事件(1936)では岡田啓介首相と誤認された秘書が、前者は海軍の、後者は陸軍の青年将校によって暗殺されました。これらは現体制に不満を持つ軍部の一部による犯行・クーデタ未遂ということで、動機も明らかにされています。
一方、今回の件ではそのような組織的背景があるとは考えにくく、よもや海上自衛隊によるクーデタ未遂のはずはありません。実行犯による単独行動ではないかと推測します」
西川教授はさらに、事件が参院選を目前に控えた日本社会の世論及び治安政策に及ぼしかねない影響を懸念している。
「恐ろしいのは今後の展開です。これであさっての参院選で自民党は圧勝するでしょう。そのあと、再発を許すなとの世論を追い風に治安立法が強化され、戦前の警察国家に逆戻りするのでは、と憂慮にたえません」
8日午前11時半ごろ、奈良市西大寺国見町の大和西大寺駅付近で街頭演説中の安倍元首相が、元自衛隊員の山上徹也容疑者(41)に拳銃で撃たれる暗殺未遂事件が発生した。安倍氏の容態は現在、搬送先の奈良県立医科大学附属病院で意識不明、心肺停止状態で予断を許さない。
事件を受け、ミハイル・ガルージン駐日ロシア大使は安倍氏の無事を祈念し、暗殺未遂の蛮行を糾弾する声明を表している。