EUは6月3日、ロシア産石油のEU圏への海上輸送を禁止する対露追加制裁を発表。制裁は12月5日から効力を発する。EU圏外への運搬は制裁の対象外となっているものの、制裁発動後は海運保険が効かなるため、国際海事法上の問題が生じ事実上輸送ができなくなる見込みだという。
同紙によると、世界のタンカーの約3分の1を保有するギリシャの海運会社は、5月、6月にロシアが通常生産する石油の約半分にあたる量を輸送。この2か月間に黒海とバルト海のロシア港に寄港した回数は151回に上り、昨年の同じ時期(89回)と比べ約1.7倍となっている。
ウクライナでロシアが特殊軍事作戦を開始して以来、世界的に燃料価格が上昇。欧州の原油価格の指標となるブレントや中東のドバイ原油価格が1バレル100~120ドルと高水準で推移するなか、ロシアは最大で40ドルの「割引価格」を提示することによってライバルに差をつけている。この結果、ウクライナ情勢悪化前の主な輸出先だった欧米に変わり、中国やインドなどアジア各国でロシア産石油の燃料供給が急増。欧州に拠点を置く海運会社も12月の禁輸措置が始まる前の「駆け込み輸送」に躍起になっているという。
欧州のあるタンカーの船主は、制裁発動直後は約3分の1のタンカーの航行を一時的に停止することを余儀なくされるおそれがあるとしている。一方、「今でも原油の需要は高く、制裁発動後はより遠方から原油を運ぶことになるので、その分多くの利益を(海運会社は)稼げることになる」とも指摘している。
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