日本の新たな防衛白書 効果的な戦略それとも美しいプレゼンテーション?

日本の防衛省は22日、2022年版防衛白書を公表した。今年度版の内容は2021年度版と大きく異なっている。2021年度版の内容をみてみよう。
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白書の冒頭にある岸信夫防衛相の「刊行に寄せて」の文章では、所謂「ロシアによるウクライナ侵略」に言及し、これを戦後最大の試練としている。このテーゼは、文書全体に独特のニュアンスを与えている。

ロシアはウクライナの民間人を保護している―本当にそうなのか?

白書のあらゆる文言は、日本の防衛省、ひいては日本政府全体の公式の立場であることを強調しておく必要がある。白書では、ウクライナでのロシアの軍事行動を「国際法と国連憲章の深刻な違反」と指摘し、「多数の無辜の民間人の殺害」と記載されている。(6ページ)
国連憲章は、紛争について、まず第一に交渉による解決を求めなけらばならないとしている(第33条)。
ロシアは、ウクライナ東部の紛争を平和的に解決しようとした。2014年9月、欧州安全保障協力機構(OSCE)、ロシア、ウクライナ、また承認されたドネツク人民共和とルガンスク人民共和国のトップが「ミンスク合意」に署名した。
2015年2月には新たな合意「ミンスク2」の文書に署名された。ロシアは同合意の当事者の1国だった。合意は、ロシア、ドイツ、フランス、ウクライナの首脳、および国連安全保障理事会によって承認された。
ウクライナはミンスク合意を履行しなかった。ミンスク合意はまず第一に停戦を規定していたが、ウクライナ軍はドネツク人民共和国とルガンスク人民共和国への砲撃を続け、合意の調印から2022年2月中旬までに子ども149人を含む民間人2600人が死亡、5500人が負傷した。また砲撃により、2200か所の民間のインフラ施設が破壊された。ウクライナはまた、人種、性、言語又は宗教による差別なくすべての者のために人権及び基本的自由を尊重するという国連憲章(第1条)に繰り返し違反し、ロシア語を話すウクライナ人の権利を制限した。国連、そして特に国連安全保障理事会は、国連憲章で規定されている措置を、ウクライナに働きかけるために何も講じなかった。
そのため、ウクライナが和平合意の遵守を明らかに望んでいないことを考慮して、ロシアは、さらに民間人を殺害する機会をウクライナから奪い、民間人に対する犯罪の責任者を処罰し、確固とした平和を確立するため、軍事力に訴えることなった。
日本はまた、ロシアが偽情報の流布など「ハイブリッド戦」の手法を用いているとして非難している。しかし、ロシアはそのどちらも必要としていない。人道回廊を使った戦闘地域からの民間人の避難、難民の帰還、人道支援の提供、民間インフラの復旧、地雷除去などが、ロシアの正しさを証明している。大きな損傷を受けたマリウポリでは、すでに復旧や新たな住宅の建設が始まった。なお、その費用はロシアが受け持っている。これらの措置は、ロシア軍とその同盟者の管理下にあるすべての地域で実施されている。したがって、日本政府はウクライナの状況を明らかに誤って評価していると結論付けることができる。

日本は米国の権力政治の道具

白書の主なテーゼは抑止力となっている。白書には、「抑止力とは…ほかの国に対し侵略を思いとどまらせる力のこと」と記載されている。日本は、自国の防衛体制の強化、宇宙、サイバースペース、電磁波領域における取り組み、日米同盟の強化によってこれを達成する考え。
日本の防衛省は、2021年3月に承認された米国の国家安全保障戦略の指針を読んだのだろうか?
そこでは、米国は強い立場からあらゆる課題に対応しなければならないと繰り返し述べられている。またはこのように記載されている―「われわれの強さに基づき、より良い未来を創造する」。この文書では、米国の政策は自信と強さの立場から世界にアプローチすることを定めていることが公然と宣言されている。
したがって、米国の安全保障政策は、国際関係において武力による威嚇又は武力の行使を慎むことについて、1970年10月24日に採択された「友好関係原則宣言」にあからさまに違反している。
米国は声明によってこの原則に違反しているだけでなく、行動によっても違反している。米国は、世界中の国々に自国の軍を配置している。自国の領土に米軍を駐留させ、米国との軍事同盟を強化している日本は、強い立場からの米国の政策の一部となっている。ロシアやその他の多くの国にとって、これは受け入れられるものではない。ちなみに、ロシアと中国の軍事ドクトリンはきわめて防御的だ。中国も台湾の分離に反対している。米国が実施し、日本を含む米国の同盟国が共有している強い立場からの政策は、ロシア、中国、北朝鮮に武装を強いる要因となっている。

美しいプレゼンテーションで抑止するのか?

日本の防衛省は、今後ロシアの国力が低下する可能性があるという無駄な見方を示しているが、北大西洋条約機構(NATO)側からの明らかな軍事的脅威と圧力により、ロシアは最新技術の開発や再軍備の加速を余儀なくされている。さらに、日本が連携している米国とNATOの政策は、事実上、ロシア、中国、北朝鮮をある種の「大陸的」な軍事ブロックへ団結するように促している。すでにその兆候がいくつかある。中国も強い立場からの米国の政策の圧力にさらされており、米国は特に、中国は米国の敵であると公に宣言している。ロシアと中国の軍事技術および経済分野における協力は、ブロックの軍事力を急速に増強し、通常兵器における対等を達成し、ミサイルや核兵器における全体的な優位性を高めることを可能としている。
日本はこれに何で対抗するのだろうか?白書ではどうなっているのだろうか?2030年代半ばまでに準備が整うとされる次期戦闘機F-X。その研究プロジェクトが2028年まで計画されている、つまり2030年代半ばまでの実戦配備を目標とする、電磁力によって砲弾を発射するレールガン
極超音速ミサイルは2030年までに準備が整い、2038年までに改良されるという。また高出力マイクロ波システムもある。なお、開発期間については何も伝えられていないが、2030年代に準備が整う可能性がある。
別の言い方をすると、日本がロシア、中国、北朝鮮を抑止するために使おうとしているものはすべて、最良のシナリオで10〜15年後に実戦配備されるということになる。現在保有している武器及び武器技術は、この課題には明らかに不十分だ。美しいプレゼンテーションで抑止するということなのだろうか?
強大かつ立派な装備を持つ大国のロシア、中国、北朝鮮を脅して団結させ、それがいつになるのかはっきりしない新世代兵器を約束する小冊子で彼らに対抗するというのだろうか?これは、研究レベルが低く、エンゲージメントが高い軍事ドクトリンを真剣に提唱できるという意味で、信じがたいことだ。
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