ロシア外務省がSNSのテレグラムに発表した声明には、「このような事態の展開は、欧州連合の仲介ミッションが失敗したことを新たに物語っている」と記されている。ザハロワ報道官は、EUがセルビア政府に対し、コソボ側の無法行為を受け入れるよう強制したことから、このような事態に発展したと指摘した。また、コソボ側はセルビア人に対する差別的なルールを導入しており、敢えて事態の悪化を目指していると批判した。
そのうえで、コソボ及び、その背後にいる米国、およびEUに対し、挑発行為を停止し、コソボにおけるセルビア人の人権を遵守するよう要求した。この声明を受け、セルビア政府は、コソボ情勢に対するロシア側の理解に感謝を表明した。
セルビアのアレクサンダル・ヴチッチ大統領は、事態の悪化を避けるため、セルビア軍参謀本部で司令官と協議を行った。また、コソボでの衝突を避けるため、コソボに展開するNATO軍「国際安全保障部隊 Kosovo Force(KFOR)」の司令部とセルビア人グループの代表者らは日本時間の8月1日午前7時から協議を行った。
コソボ北部にあるコソヴスカ・ミトロヴィツァ市で、セルビア人が多く暮らす地域では31日夕方にサイレンが鳴り響いたほか、コソボとの境界ラインでは銃撃音が鳴り響いた。この銃撃戦による死者は確認されていない。
市内のセルビア人グループは北部の路上にバリケードを設置した。これに対し、市内のアルバニア人グループは南部に集中し、セルビア人グループ側へと通じる橋の周辺に集まった。この事態を受けて未承認国家コソボの警察はセルビア人グループがバリケードを設置したことを理由に、セルビア中心部へと通じる2個所の通過ポイントを封鎖した。
セルビアのヴチッチ大統領は31日、市民に呼びかけた中で、未承認国家コソボの警察はセルビア政府が発行した運転免許証による入域を8月1日から禁止するほか、「コソボ共和国」ナンバーに再登録させる手続きを開始すると発表していた。ヴチッチ大統領はコソボ側に平和維持の徹底を呼び掛け、コソボに暮らすセルビア人に攻撃的政策を推し進める場合、「セルビアが勝利する」と警告した。
セルビア政府はEUによる圧力のもと、コソボに暮らすアルバニア人グループとの関係正常化に向けた対話を2011年にスタートした。対話はEUの仲裁で進められた。セルビアとコソボの関係正常化について定められたブリュッセル協定は2013年4月に調印。2015年8月には、セルビア人が多数を占める自治体の連合もしくは共同体の樹立に関する合意が調印されたが、合意の遂行期間である2018年8月4日を過ぎてもコソボ側が合意内容を遵守しなかったことから、コソボでは緊張が高まった。
関連ニュース