米デューク大の研究者らは今回、大気汚染がマウスにどのような影響を及ぼすのかを調べる実験を行った。その実験では、妊娠中のマウスを、ディーゼル車の排気ガスを含む汚染された空気の中で過ごさせた。そして妊娠末期には、巣作りの材料が不足するという新たなストレスにさらされるようにした。
その結果、ストレスを受けた母親のマウスは、通常の環境下にいるマウスと同じように、子どもを大切に育てていることが分かった。しかし、オスの子どもは、他の子どもと一緒に過ごすのを避け、黄色いゴム製のアヒルと一緒にいるのを好むなどの行動をとり、長期にわたって社会的な行動を取れなくなっていた。しかし、成体になると社交性が増すようになっていた。
研究者らが分析したところ、オスの子どもは、社会的な人間関係の構築に重要な領域である、脳の前帯状皮質のシナプスが過剰に生成されている他、中枢神経系の免疫細胞「ミクログリア」の機能が低下していることが分かった。研究者らによると、この現象は、人見知りのレベルが高くなることを説明できる可能性があるが、ストレス要因が正常な脳の発達をどのように変化させるかはまだ解明できていないという。
ヒトの自閉症は、必ずしも内向性と関係があるわけではなく、社会的な合図や慣習を理解できないことと密接に関係している。この研究では、大気汚染のひどい貧しい地域に住む子どもほど、自閉症を発症するリスクが高い可能性があることが示唆されているが、「ミクログリア」の活性を調節する薬剤を投与することで、ストレスからくる神経系への影響を防ぐ可能性があることが明らかになった。
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