モンブラン登山ルートの始点にあるサンジェルヴェレバン・コムーネのジャン=マルク・ペイレク市長は、仏グーテ小屋から出発する一般的なルートで登頂をめざす登山家には、登る前に1万5000ユーロ(約207万円)のディポジットを支払う義務が課せられることを明らかにした。登山家に救助の必要が生じた場合はそのうち1万ユーロ(約138万円)が、また死亡した場合は、その葬儀費用としてさらに5000ユーロ(約69万円)が地元自治体に支払われる。
ペイレク市長は、危険を冒さぬようにという警告を無視し、「ロシアンルーレット」に興じる登山家が絶えないためにこうした措置を講じざるをえなくなったと説明し、先日もルーマニアから来た5人の登山家が装備を怠り、ショートパンツ、スニーカーに麦わら帽子姿で登ろうとして、山岳警察に止められた例を引き合いに出した。
地元のガイドたちは落石の頻度が高まったために人気の登山ルートでの登頂を7月半ばから1か月ほど一時停止している。地元自治体も異常高温で登山の危険度が増したとして、一時的に山に登らぬよう旅行者らに呼び掛けている。
「山頂を目指す人は自分のリュックサックに死を携えて登っている。だからその救助、埋葬の費用は前もって考慮しようではないか。その費用をフランスの納税者が肩代わりするなどもってのほかの話だ」
山岳スポーツの安全性をめぐる論議は特にこの夏、異常高温で氷河の融解速度が高まったことから白熱している。7月11日、イタリアの東アルプス山脈ドロミテの最も標高の高いマルモラーダ北部では氷河が溶け、巨大な氷の塊が落下し、11人が死亡する事故が起きている。