2002年9月17日の日朝首脳会談の結果、当時の総書記だった 金正日氏は17人の拉致被害者のうち13人についてはその事実を認めた。その後、拉致被害者5人とその家族が日本への帰国を果たしたものの、他の拉致被害者については依然として何の情報も明らかにされていない。北朝鮮側は拉致被害者は13人でそのうち8人はすでに死亡しており、残りの5人が日本へ帰ったため、拉致問題はすでに解決したと主張しているが、日本側はこの信憑性を疑っており、8人のうち少なくとも数人はまだ生きているはずだと考えている。
過去20年間、日本政府はこの問題を進展させようと様々に取り組んできた。これに対して拉致被害者・田口八重子さんの長男で 拉致被害者家族会事務局の次長を務める, 飯塚耕一郎さんは、政府のこうした尽力を「0点」と評価し、拉致問題に解決には世論の支持が欠かせないとして、次のように語っている。
飯塚さん:「私個人の考えですと、家族が帰ってくるか、来ないか、ゼロか100か、というところで、家族が帰ってこない状況が20年近く続いているということは0点なわけでございます。我々は遠い交渉のプロセスのこととか、それに至る経緯とかは我々拉致被害者会がどうこうする話ではなく、本当に家族が返されるのかどうかということにしか焦点が置かれていないということをご理解いただきたいと思います。
この20年、異常な事態が続いています。本当に悔しいし、悲しいし、何かもっとできないのかということをずっと20年、毎日考えてきているわけですが、これ以上もうこの苦しい思いを継続したくないです。私たちは家族の時間を取り戻したいだけです。そのためにまずは絶対的に必要なのは世論の力というところ、ですので、引き続き皆様のご理解ご協力を賜りたいと思っております」
飯塚さんは、拉致被害者問題の解決がここまで引き延ばされたままになっている原因は、ひとつには 核ミサイル問題との絡みにあると考えている。飯塚さんいわく、 核ミサイル問題は解決に膨大な時間が要されるが、拉致問題の方は格段に短い時間で解決が可能だからだ。このため、 飯塚さんはこの2つの問題を切り離して考える必要があると見ている。スプートニクは飯塚さんに、日本政府は今後も同じ方針で進む可能性があるか、たずねた。
飯塚さん:「日本政府と外務省は、日朝ピョンヤン宣言に基づき、核ミサイル問題と拉致問題を進めるということを大義名分としていました。今後、切り離しが可能か否かは正直、政権がどうするかによります。切り離した場合、何ができるかということに基づいて考えて進むのであれば、やはり切り離しはありえるのではないでしょうか。ただ、政府も外務省もそれをオープンにして進めることはしないというのが個人的な見解です」
スプートニク:日本政府は拉致問題の早期解決に何ができたはずだと思われますか?
飯塚さん:「金正恩にこの問題を解決するのだという意思をもう少しダイレクト見せつけることが一番重要なところだと思います。今、岸田さんは条件を付けずに会う準備があると言っていますけど、では何のために会うのかということが向こうにはっきり伝わってない。岸田総理が拉致被害者を救うために金正恩と会いたいという意味合いのメッセージをちゃんとオープンにして話し、日本国内、北朝鮮に向けて発するということが今、すごく重要なトリガーかなと思います」
スプートニク:拉致被害問題の解決には世論の支持が必要とおっしゃられましたが、これだけ問題が長引いてしまうと、社会の関心も薄れてしまったとは思われませんか?
世論の関心をより戻すにはどうしたらいいでしょうか?
飯塚さん:「正直言って、問題が長年にわたるので熱量が下がっても仕方がないと思います。我々は拉致被害者の家族会であって、活動家ではないので、例えば、私の養父の飯塚繁雄が亡くなったり、今回の20年だったりと節目節目で、今日みたいな場で淡々と訴えていくしかないです。(今後も)全ての拉致被害者を即時、返してほしいです(というメッセージを皆様にお伝えしていきます)」