ル・モンド紙は、上海協力機構の主な目的については中国の習近平国家主席が演説の中で規定したと書いている。習国家主席は、自国の主権を守り、西側からの干渉に抵抗することを基本として、各国間の協力をさらに深めることを提案した。ル・モンド紙は、習国家主席がこの秋、インドネシアでのG20サミットのフィールドで成立するバイデン米大統領との会談を目前に控えた今、この声明を表すことで、上海協力機構に依拠した新しい世界秩序の導入を加速させたいとの考えを強調したと見ている。
一極化世界に中国は反対
ルモンド紙は、習近平国家主席の発言を引用している。習主席は、現代世界は2つの政治的志向の間の競争によって特徴づけられており、これを1つは連帯と協力に基づくもので、もうひつつは不和と対立に基づくものと規定した。ル・モンド紙は、習国家主席が、中国がロシアと協力する用意があることを明確に表明している以上、この発言は中国とロシア対西側諸国との地政学的な対立に言及したとの考えを示している。
習国家主席の提案する「ロードマップ」について、ル・モンド紙は5つの項目から成り立つと説明している。
相互支援を強化し、「多国の内政干渉に共に立ち向かう」。
テロ、分離主義、急進主義、麻薬密売、サイバー犯罪と闘う。
上海協力機構内にビッグデータ分野での協力センターを創設する。
食糧問題の解決で急務を要する各国を援助する。
教育、科学、文化、健康、メディアなどの分野での協力を深め、国連を含む他の国際機関や地域的な組織とのコンタクトを深める。
上海協力機構の首脳たちが採択した総括宣言では、2001年の創設以来、この同機構が国際法と多国間主義の原則、そして特定の国や文化の優越することのない、文化=文明の多様性を重視してきたことが再確認された。おそらく、こうした理念が上海協力機構に参加を希望する国を増やしているのだろう。
インドは対立拒否の戦略で武装
ル・モンド紙は、上海協力機構の開放性を示す最も顕著な例としてインドの加盟を挙げている。インドは国益のためにいかなる同盟も放棄せず、すべての人とパートナーシップ関係を構築する意向を示している。例えば、インドはロシアの軍事演習にも米国の軍事演習にも参加しているが、対露制裁には組しておらず、国連の反ロシア決議も西側からの激しい圧力を押しのけ、支持しなかった。ル・モンド紙は、ウクライナにおけるロシアの特殊軍事作戦を評価するなかでインドが唯一自らに許可しているのが、交渉のテーブルに戻るよう、紛争当事国らに呼び掛けることだと強調している。
ル・モンド紙はインドの行為はパラドックス的と言えると書いている。モディ首相は上海協力機構サミット参加の寸前まで仏カトリーヌ・コロナ外相と会談しており、その席でインド太平洋地域における中国抑止のための防衛技術協力を話し合っていたからだ。ル・モンド紙の見解では、インドは一切のためらいもなく米国とも中国とも欧州ともロシア、日本、全ての近隣諸国とも関係を構築する構えであり、従来の同盟国のグループを拡大しつつある。これが如実に物語るのは、欧米はもはやインドにとってヘゲモニーではなくなり、世界の第一線はアジアへ移行したという事実だ。
先日の上海協力機構サミットを総括したサマルカンド宣言の骨子はこちらからお読みいただけます。
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