英国では前ジョンソン政権時代に企業の利益部分に係る法人税を19パーセントから25パーセントに引き上げる方針が決定。9月に政権に就いたトラス首相は、この引き上げを凍結し、G20で最も低い税率を維持することで物価の上昇を防ぎ、経済の下支えに活かそうとした。
しかし、財政的裏付けのないトラス首相の政策に、批判が集中。英国債の需要は減少し、通貨ポンドも1ポンド=1.054ドルという歴史的な安値をつけた。
世論や市場からの圧力を受けるなか、トラス首相は物価対策として進めてきた大規模な経済政策の一部を方針転換せざるを得なくなった。今回の減税措置のほかにも、これまでに高所得層の所得税を引き下げる政策も撤回している。
また、こうした経済政策をめぐるドタバタ劇のなか、クワーテン財相はトラス首相の要請を受けて辞任。事実上の更迭とみられる。クワーテン財相は9月初旬に就任してわずか38日で内閣を去ることとなった。後任にはメイ政権で外相を務めたジェレミー・ハント氏が任命された。
記録的な物価高による経済危機やエリザベス女王の死去といった歴史的な転換点を迎えるなか、党内の熱い支持を受け政権の座をつかんだトラス首相。だが、相次ぐ経済政策の失態ですでにその足元は揺らいでいる。
英紙オブザーバーが行った世論調査によると、トラス氏の評価は、新型コロナウイルスによる制限措置の実施中にパーティーを開催した前任者ジョンソン氏の評価よりもさらに低いという。
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