日本は人口減少を防げるか?人口減少の原因は文化にある?日本の専門家が答えた

人口問題は、現代日本における喫緊の課題のひとつである。そこで、公益財団法人フォーリン・プレスセンター(FPCJ)が、外国人記者を対象とした人口問題に関する一連のブリーフィングを企画した。最初のゲストは、国立社会保障・人口問題研究所の岩澤美帆氏(人口動向研究部の部長)。岩澤氏は主な人口トレンドと、どんな課題があるのかを説明し、記者団の質問に答えた。
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国立社会保障・人口問題研究所の岩澤美帆氏によると、日本の人口は明治時代に急速に増え始め、その背景には近代化の流れがあったという。3500万人だった日本の人口は150年で1億2000万人にまで増加した。
しかし、現在の予測では、今後、かつての成長は終わり、人口は急減に転じるという。2065年には人口は半減し、約8800万人になると考えられる。これは1965年の日本の人口とほぼ同じだが、人口構成は根本的に変化する。2065年には、若年層の比率が著しく低下し、高齢者の比率が増加する。
岩澤氏は、このような傾向から、将来の日本が直面する5つの主要な人口課題を挙げた。
1.
多数派になる高齢者
2.
低出生力の罠(出生数の低下が、子育てサービスの縮小と高額化により、さらなる出生数低下を招く)
3.
単身高齢者の増加
4.
地方の消滅
5.
首都圏で増加する高齢者、である。
また、岩澤氏は、このまま何も対策を講じなければ、こうした人口動態の変化は政治にも悪影響を及ぼすことになると強調する。高齢者に比べて若年者の意思が政治に反映されにくく、不利益を被りやすい構造になるのだ。
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スプートニクの記者は岩澤氏に、人口減少の主な理由は何だと考えるか、また、この流れの最大の要因は日本文化そのものにあると考えるか、それとも、日本のケースも他国と何ら変わるものではなく、世界の潮流の一環だと考えるか、を尋ねた。
岩澤氏:「減少の一番の要因はやはり、出生数が減っているということだと思います。さらに、最近では母親になる世代の人口も減っているので、母親の世代が減ればますます子どもが減る、という理由になっています。その要因ですが、やはり、結婚するとか子どもを持つということを、当たり前、常識というような捉え方をしている日本人が昔は多かったわけですけれども、今は、それは人それぞれといいますか、自分で家族を持たないという生き方もあるという風に捉える人が増えてきている、というのは思います。特に、その「家族」という意味では、やはり国によってパートナーを持つこと、それから子どもを持つことに価値を高く持つ国というのは、出生数も高いですけれども、そういうことよりも他のライフスタイル、あるいは個人の生活を大切にしたいという、そういう考え方が増えれば、子どもも少なくなっていくと思いますし、日本は、そういう意味では若い人の価値観が変わってきていることがあるのではないかと思います。 」
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岩澤氏は、他の記者の質問に対し、日本の人口減少は避けられない流れであり、この流れは不可逆的なものである、その減少をできるだけ痛みの少ないものにすることが現在の最大の課題なのだと語った。
岩澤氏:「おそらく、日本のどの方も人口減少を元に戻すというか、増やそうと現実的に思っている人はいないと思うんですね。減るのは当然だと思っています。ただ、できるだけゆるやかに減る、というのが社会にとっては一番負担がないと、そういう観点で、例えばもし子どもが欲しいけれども産めないという人がいるなら、できるだけ産めるようにするとか、高齢者がより健康に活躍していけるようにする、という形で対策を取ると。ただ、本当に「人口が減らない」とか「増える」ということはもう考えられないですし、日本社会でそのように考えている人はいないという風に考えています。 」
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