産業革命以前、木材は薪や木炭などに加工され、暖房やエネルギーとして利用されていた。現代では石油・ガス・石炭が主なエネルギー源となっているが、ウクライナ情勢をめぐる対露制裁などにより欧州連合(EU)諸国では深刻なエネルギー不足となっている。そうしたなか、燃料としての木材に再び注目が集まっていた。
「Politico」によると欧州の一部の国は、エネルギー危機で高まる木材需要に対応するため、森林伐採に関する規制の緩和に動いている。ハンガリーは自然保護区の伐採を禁止する法律を撤廃。これに欧州委員会は「EUの法律に反する恐れがある」として統制を強化する姿勢をみせている。
ルーマニアではエネルギー価格の高騰を抑えるために木材価格に上限を設定。世界自然保護基金(WWF)は、上限価格の設定が違法な森林伐採を誘発する可能性があると指摘している。バルト三国のラトビアでも若木の伐採が解禁され、リトアニアでは政府が林業事業体に伐採量を増やすよう求める事態となっているという。
もちろん、すべての国が森林伐採に動いているわけではない。だが、環境保護活動家らは木材の需要が高まれば、ただでさえ枯渇した森の消滅や違法な伐採の増加が懸念されると警鐘を鳴らしている。
国際環境NGOグリーンピースのハンガリー代表、カタリン・ロディクス氏は、エネルギー安全保障のための自然保護区の伐採は「壊滅的な狂気」と強く批判。別の社会団体「Fern」のマルティン・ピジェン氏も「森林にはとても、とても暗い冬が待ち受けている」と危機感を示している。
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