【解説】予審判決は17日に マレーシア航空MH17便撃墜事件

オランダにあるハーグの裁判所は17日、2014年にドンバス上空で撃墜されたマレーシア航空MH 17便(ボーイング777型機)に関する予審判決を下す予定。これによって、8年間続いた捜査に終止符が打たれるのだろうか?
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2014年7月17日、アムステルダム(オランダ)発クアラルンプール(マレーシア)行きのボーイング777-200ER型のマレーシア航空旅客機MH17便がウクライナ東部で墜落された。これにより乗客283人、乗員15人が死亡した。犠牲者の国籍は、オランダをはじめとする10カ国。
同旅客機の残骸は、ドネツク人民共和国(DPR)の民兵の武装部隊が支配する地域(15平方キロメートル超)で発見された。墜落の原因は、地対空ミサイルや空対空ミサイルによるものという説がすぐに浮上した。ウクライナ当局とDPRの代表者は、事件の原因について直ちにお互いを非難し合うようになった。

調査開始

事故の翌日となる2014年7月18日、ロシアの国家間航空委員会(IAC)は国際民間航空機関(ICAO)の支援の下で撃墜事件の調査委員会を設置することと、ブラックボックスの引き渡しを行うように提案した。同日、欧州安全保障協力機構(OSCE)のウクライナ特別監視委員会のメンバーが現地に到着し、事件現場の状況を視察した。
オランダの裁判所 マレーシア航空17便撃墜に関する別案の検討を予定せず
7月21日、国連安全保障理事会は、ウクライナで発生したボーイング機撃墜事件に関する決議2166号を全会一致で採択し、この事件に対する包括的な独立調査を要求した。犠牲者の大半がオランダ人であったことから、国連、ICAO、マレーシア、オーストラリア、ドイツ、米国、英国がこの事件の調査権を獲得した。
その翌日の7月22日、ドネツク市行政の代表者は、OSCEの監視団やジャーナリストの立ち会いのもと、発見されたブラックボックスをマレーシアの航空専門家に引き渡した。その専門家はオランダの専門家にブラックボックスを渡し、オランダの専門家はICAO付属のファーンボロー研究所で勤務するイギリスの専門家やIACにブラックボックスの解析を依頼した。
7月24日、英国当局はブラックボックスの解読データを公表せず、オランダ当局に委ねると発表した。その数日後の8月8日、ウクライナ、オランダ、ベルギー、オーストラリアの4カ国は、事件調査に関する情報は4カ国すべての承認を得た場合にのみ公開することで合意した。これにより、ロシアはブラックボックスのデータを入手することはできなくなった。

調査の暫定結果と当局の発表

2014年9月9日、オランダ安全保障委員会は、「機体は空中で崩壊し、おそらく複数の高エネルギー物体の外部衝撃によって構造的損傷が生じた」という事件調査の暫定結果を発表した。その発表の中では、旅客機のシステムにおける技術的な不具合や乗務員のミスについては報告されていない。
マレーシア航空MH17便撃墜事件の審理終結=オランダ
翌年の2015年10月13日、地対空ミサイル「ブーク」を製造する「アルマズ・アンテイ」コンツェルンの専門家が、マレーシア航空MH 17便撃墜事件の独自調査の一環として実施した本格的な衝突シミュレーション実験の結果をメディアに公開した。「アルマズ・アンテイ」の情報によると、この旅客機は、「ブーク」に搭載された旧型のミサイル「9M38」で撃墜された可能性がある。このミサイルは1986年にソビエト連邦で戦闘任務から外されたが、ウクライナ軍はMH17便の撃墜事件の際にも使用していた。同社は発射の軌跡も解明しており、同社が行った実験によると、ミサイルは墜落時にウクライナ軍が占拠していたザロシェンスコエ村から発射されたという。
同日、オランダ安全保障委員会は、ウクライナ東部の約320平方キロメートルの地域から「ブーク」から発射された「9M38」ミサイルが旅客機の操縦室の左側で爆発し、旅客機が空中分解したとする最終調査報告書を発表した。同委員会は、ミサイル発射の正確な場所を確定しておらず、ウクライナ側が望んでいたように、298人の死者を出したボーイング機の撃墜事件の責任をドネツク人民共和国の民兵に負わせるようにはしなかった。

裁判官は誰なのか?

2016年9月には、撃墜事件に関する調査結果が公表された。その調査結果によると、旅客機はロシアの「ブーク」から発射されたミサイルによって撃墜された。国際捜査当局の見解では、その「ブーク」はウクライナ東部の民兵に引き渡されたものというもの。この結論は、ウクライナ側の地元住民の証言に基づいているという。一方、ロシア当局は、旅客機を撃墜したミサイルはソ連時代にウクライナに納入され、それ以来、ずっとその地にあったと主張している。この撃墜事件では、ロシア側の証拠はすべて無視されている。しかし、最も奇妙なことは、「ブーク」を開発したアルマズ・アンテイ社が、ミサイルがどちらから飛んでくるかが明確に分かるという情報を公に行った実験で得たものの、今回の調査では利用されていない。
中国 東方航空ボーイング737機墜落の原因を中国人専門家が指摘
その後の2019年6月、オーストラリア、ベルギー、マレーシア、オランダ、ウクライナの検察・司法機関の合同捜査チームが、ドネツク人民共和国の民兵ウクライナ人1人とロシア人3人が、民間航空機に対して意図的にミサイルを発射したとして刑事事件として立件した。2021年12月、オランダの検察は、この4人に終身刑を求刑したが、4人全員が有罪を否定している。検察側の主張は、ウクライナ治安局から提供された無線傍受の録音数本のみに基づいている。興味深いことに、捜査チームは、米国当局が保有するとされているミサイル発射を確認する衛星画像データを求める要請書を2度にわたって送付している。しかし、米国はその要請を拒否した。
ロシア当局は、ウクライナ東部で発生したマレーシア航空機撃墜事件にロシアが関与したとの疑惑を繰り返し否定している。ロシアは当初から調査のどの段階にも参加できなかった他、提供したロシアの衛星やレーダーの画像も調査では考慮されなかった。また、ウクライナの航空管制官と同旅客機のパイロットとの交信記録を調査するようにというロシア側の要求にも答えていない。管制官は事件が起こる前にパイロットに航路変更を求め、戦闘ゾーンへの進入について説明できる機会があったのだ。墜落の翌日、そのウクライナ人管制官は辞職。その管制官のその後の行方は分からなくなった。以上のことから、ロシアには合同捜査チームが捜査を開始する前から犯人を特定していたと疑う根拠がある。
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