マレーシア航空撃墜事件 ロシア外務省「蘭裁判所の判決は政治的」

2014年、ウクライナ東部で起きたマレーシア航空MH17便(ボーイング777型機)の墜落事故で、ロシア人ら3人に終身刑を言い渡したオランダ・ハーグの裁判所の判決について、ロシア外務省は17日、「判決は政治的」と批判する声明を発表した。
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同日、これまでにハーグの裁判所は、地対空ミサイル「ブーク」によってMH17便を撃墜し乗員乗客298人を殺害したなどとして、ロシア人2人とウクライナ人1人に終身刑などの有罪判決を言い渡した。同時に起訴されていたロシア人1人については無罪となった。いずれの被告もオランダには滞在しておらず、実際に服役することはないとみられる。
ロシア外務省は次のような声明を発表した。

「捜査のプロセスや結果が、この悲劇にロシアが参加したとする、ハーグと共同調査チームにより促進された主張を強化するための政治的要求に基づいていることを証明している」

また、同省は「ハーグの裁判所が現在の政治状況を支持して公平な正義の原則を無視し、オランダの司法制度全体の評判を損なったことを大変遺憾に思う」としている。
ハーグの裁判所がマレーシア航空機MH17事故の予審判決を下す 現時点の状況は?
同省は、「ブーク」によってMH17便が撃墜されたとする信頼できる証拠がないという弁護側の要求は考慮されなかったとしている。

「判決において裁判所は、オランダ検察の結論が、身元が秘匿された匿名の証人の供述のほか、出所が不明だったり、利害関係のあるウクライナから引き渡された証拠に基づくものだったことに注意を払っていない」

また、同省は裁判所がどこからミサイルが発射されたかを「詳細に調査」しようとしなかったと指摘。ウクライナ軍による発射を示唆した証拠は「単に無視された」としている。また、ウクライナ側は自らレーダーのデータ提供を拒否したことにも触れたほか、事件当日に勤務していたウクライナ側の航空管制官の音声記録のデータについても「跡形もなく姿を消した」としている。
【解説】予審判決は17日に マレーシア航空MH17便撃墜事件
マレーシア航空MH 17便の墜落事故の裁判は2020年3月9日、オランダで開始された。
アムステルダム発クアラルンプール行きのマレーシア航空MH17便は、2014年7月17日にドネツク近郊に墜落。ウクライナは自国のレーダーからのデータ提供を拒否し、米国も、保有するとされているミサイル発射を確認する衛星画像データを調査に提供することを拒否している。
捜査は、オランダ最高検察庁を中心とする合同捜査チームによって、ロシアの参加を排除した形で行われてきた。捜査チームは、ボーイング機は義勇軍の統制する地域からロシア軍クルスク第53対空ミサイル旅団に所属の地対空ミサイル「ブーク」を使って撃墜されたと主張している。
ロシア最高検察庁のニコライ・ヴィニチェンコ副長官はスプートニクに対し、ロシア側はオランダに、ロシアのレーダーのデータのみならず、ブークから発射されてボーイング機を撃墜したミサイルがウクライナのものであり、発射はウクライナの統制する地域から行われたことを証明する資料も提供したものの、捜査チームはこれらの情報を無視したことを明らかにした。
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