エレクトロニクス用の柔軟で弾力性のある新材料を模索していたオーストリアのヨハネスケプラー大学リンツの研究者グループは偶然、霊芝の菌組織に優れた絶縁特性があり、高温に耐えられることを知った。電子回路用基板は個々の回路を絶縁し、その上に置かれた電子部品を冷却するため、絶縁特性と高温への耐性が品質の決め手になる。
現在、電子回路の基板は、生分解性のないプラスチックで作られている。科学者らの研究によると、キノコの菌糸は絶縁性ではプラスチックよりやや劣るものの、紙と同じ厚さで200度以上の高温に耐えることができ、電気回路に見事に用いることができることがわかった。
この菌は野生では薄い殻を形成して、自分の栄養媒体である木材を守っている。これはプラスチックとは異なり、木くずから簡単に製造でき、加工も要らず、分解も普通の家庭用コンポストで2週間で完全に分解できる。
この研究はまだ実験的で、大量生産にはほど遠いが、将来的には、生分解性のキノコ基材が、一部の種類のプラスチックの代替品になりうるという。
工業素材としてのキノコへの関心は高まっている。スポーツメーカーのアディダスも、自社スニーカーで素材の実験を続けている。同ブランドは2021年に世界初となるキノコの根の菌糸体から作られた世界初のスニーカー「スタン・スミス・マイロ」をリリースした。
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