【解説】ペルーの政治危機 政権交代後の内情の変化

ペルーでは、ペドロ・カスティジョ前大統領の支持を示し、抵抗する市民と警察の衝突が沈静化しないどころか、日増しに激しくなっている。衝突で死者数名と数十人の負傷者が出たことから、現職のボルアルテ大統領は非常事態を宣言した。スプートニクは政権交代後のペルーの情勢を時系列でまとめた。
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大統領VS議会

12月7日、ディナ・ボルアルテ氏はペルー大統領の就任の宣誓を行い、新内閣を発足させた。ボルアルテ新大統領は演説で「政治的休戦」を呼びかけ、政治体制の安定を保証するためとして「国民統一政府」の創設を宣言し、最優先事項として汚職対策を強調した。
この事態は、カスティジョ氏がテレビ演説で、議会の解散と「非常事態政府」の樹立を発表した後に起きた。
カスティジョ氏
ところが議会は12月7日に予定されていた弾劾訴追を行い、圧倒的多数でカスティジョ氏の全権はく奪を決定した。この票決の後、ボルアルテ副大統領が国家元首に就任し、ペルーで初の女性元首が誕生した。

カスティジョ氏の支持者らが街頭で抗議

抗議デモは12月9日、首都リマの議事堂付近で展開された際に大規模化した。抗議市民らはプラカードや横断幕を掲げ、「ディナ・ボルアルテ、お前は私の代表ではない」「裏切り者のディナ・ボルアルテ」(彼女はかつてカスティジョ氏によって副大統領に任命されている)と叫んだ。市民は新政府を拒否し、ペルー国家警察特務班(ディロエス)の刑務所に収監されているカスティジョ氏への支持を表明した。
カスティジョ氏の支持者らはリマの主要な高速道路のアヴェニーダ・ウガルテを封鎖しようとした際に警官隊と衝突。警察は、警察と道路に投石するデモ隊の解散させようとした。
カスティジョ氏の支持者らは同氏が公判の前の7日間の勾留で受けている兵舎の周りにも集結した。
この後の11日、ペルー空港民間航空公社(コルパス)は「襲撃と破壊行為」があったことを理由にアプリマック州のアンダウアイラス空港の閉鎖を発表。この襲撃では5人が負傷、2人が死亡している。空港当局は抗議者らが送信機と燃料倉に放火し、滑走路に深刻な被害を与えたことを明らかにした。

憂慮を呼ぶカスティジョ氏の健康状態

ギリエルモ・ベルメホ議員は国際赤十字のミリヤン・スポラリク=エッガー会長に対し、カスティジョ氏の健康状態に注意をむけるよう要請した。
こうなったのは前大統領が自分の同意なしに強制的に採血されたと言った後だった。ベルメホ議員は12月11日、SNSの自身のアカウントで、カスティジョ氏はペルー国家警察特務班の医療スタッフを「信頼していない」と書きこみ、「不法に拘束された」事実についても言及した。
「カスティジョ大統領と会った後、彼が自分の同意なしに、警察によって強制的に健康診断を受けさせられたことがわかった。これは大統領の人間としての権利に対する明らかで深刻な侵害だ。私は大統領自筆の手紙からこの事実を証明できる」
カスティジョ氏は収監されたリマの刑務所でも、検察庁から健康診断を要請され、これを拒否している。
法医学研究所のフランシスコ・ブリズエラ所長は地元のラジオ局 「ノティシアス」に語った中で、カスティジョ氏が拒否したのは「心理・精神医学鑑定」であり、医師らはカスティジョ氏を驚かそうと「変装」して来たという同氏の支持者の弁に反論している。また、刑務所に来た医師団はカスティジョ氏の診察に必要な書類は全て整えており、検察庁の代表も同行していたと説明した。
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ブリズエラ所長はまた、カスティジョ氏は拘束された12月7日に「問診を受けた」が、「3人の医師の診察を拒否」し、血圧測定などの検査を行った結果「健康であることが確認された」と話している。

4年間で6人の大統領

ペルーで過去4年の間に大統領は6人も交代したことは、この国が政情不安定であることをはっきりと物語っている。
この間にペルー大統領としての任期を全うしたのは、2011年から2016年まで就任していたオジャンタ・ウマラ氏ただ1人だ。それだけではない。2016年以降、選挙に当選して大統領職に就いた人物は、2016年4月に当選したペドロ・パブロ・クチンスキ氏と2021年4月に当選したカスティジョ氏の2人のみ。その他は、大統領代行として大統領職につくか、または議会から就任している。
この他にもペルーの政治史には驚くような事例が2回起きている。1人目は2020年11月に就任したマヌエール・メリーノ氏で政権に就いた時間はわずか5日間だけだった。2人目は大統領としては全権ではないものの、2019年9月に1日だけ「大統領代行」として就任したメルセデス・アラオス氏だ。
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