またロシアでは「新年を迎えたように、その年を過ごす(1年の計は元旦にあり)」と言われている。そのため旧年を送り、新年を迎える伝統や習慣をすべて守るのは大変重要だ。これら伝統や習慣はロシアでは数百年かけて積み重ねられたものであり、入念に準備をしなければならない。
祝日に向けた準備
祝日の幸福感はすでに12月初旬からロシア人を包んでいる。街の店舗では新年ツリーの飾りや、新年のご馳走、新年の食卓に欠かすことはできないオレンジやみかん、そしてもちろん「シャンパンスコエ」が登場する。屋外のクリスマスマーケットなども開催される。誰もがプレゼント選びや長い休日に向けた食料品の買物に忙しい。さらに主婦は年末までに家の大掃除を済ませなければならない。不用品はすべて事前に片付けておく必要がある。古く不要なものを新しい年に引きずってはいけないのだ。さらにあらゆる借金を返済し、すべての屈辱を赦さなければならない。新年のテーブルに集まる全員が清々しい気分であるために。
新年のツリー
ロシア人にとってツリーのない新年を想像することはできない。多くの人にとって針葉樹の刺激的な香りは、みかんのやや苦い香りと混ざり、子どもの頃から大好きな祝日の雰囲気を連想させる。自宅に大きなツリーを置くことができなければ針葉樹の枝を何本が束ねておいてもいい。ツリーの飾りは各家庭で代々受け継がれており、美しいツリーの枝に19世紀に作られた白い天使を目にする可能性もある。子どもたちにとってツリーの飾りつけほど楽しいものはないだろう。ツリーのてっぺんにベツレヘムの星を飾る権利をめぐり、真剣な奪い合いが繰り広げられる。ツリーの根本には「マローズじいさん」と孫娘の「スネグーロチカ」が揃って並べられ、そして朝には家族全員がツリーの下に新年のプレゼントを見つける。
ライトや銀色のティンセルで輝く新年のツリーは都市や村で人々を喜ばせる。ツリーは店のウィンドウや広告パネルでも輝いている。公園や広場、公共交通までが明るい光で彩られる。
新年のご馳走
新年の食卓は単に美味しいものだけでなく、長い休日分をまとめて用意するため量も半端ではない。主な料理を挙げていこう。まず冷たい前菜としては伝統的な「オリビエ」サラダと「毛皮を着たニシン」が欠かせない。自家製ピクルスと酢漬けキャベツも食卓に必須だ。現代の流行としては低カロリーのギリシャサラダやシーザーサラダ、エビのカクテルサラダがある。イクラはオープンサンドとしてパンの上に載せるよりも、アボガドやゆで卵の上に載せる人が多いようだ。煮凝りはおそらく数百年もロシア人の食卓を飾り続けてきたが、すべての主婦がこの料理に6-8時間を捻出できるわけではない。本物のロシアの煮凝りを作るにはこれくらいの時間を要するのだ。温かい前菜のチョイスは各人のお好みで。キノコやマッシュルームホワイトソース煮を詰めたジャガイモ、チーズとハムを詰めてオーブンで焼いたナスやトマト、あるいはベーコンに重ねて焼いたチキンフィレなど。
メインディッシュはほとんどの場合、鶏になるだろう。「アントノフカ」という小ぶりのリンゴかソバの実カーシャを詰めたガチョウ、七面鳥あるいはチキングリル。あるいはニンニクを詰めた羊の足を好む人もいるだろう。また地中海料理のファンは海老のチリソース添えを選ぶかもしれない。この料理にロシア風味を加えるとすれば、チリソースに天然ハチミツを加える必要がある。
オリビエ
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新年の食卓では通常のパンに代わり、色々な具の入ったパイやピロシキが並べられる。形やサイズも様々、中身もキャベツ、ジャガイモ、ネギ、肉、魚と様々だ。甘いペストリーに関しては、1位はアップルパイだろう。ただしリンゴの代わりにどのようなフルーツでもベリーで焼いてもいい。市販のケーキももちろん選択肢のひとつだ。ケーキを選ぶ際には家族の大半の好みが考慮される。様々な種類のチョコ菓子、シュガーブレッドやジンジャーブレッド、クッキー。これらも祝祭のテーブルを彩るのに欠かせない。
特別な役割を果たすのが果物だ。ロシアの新年は冬の祭りであり、窓の向こうは極寒や吹雪かもしれない。しかし新年の食卓のみかんは小さな太陽であり、遠く離れた国の比類なき香りが新年の祭りに特別な魅力を与えている。みかんの隣にはオレンジ、バナナ、キウイ、梨、りんごが並ぶ。より一層祝祭の雰囲気を盛り上げるのはパイナップルだ。子どもたちに受けがいいフルーツサラダを作るのもアリだろう。
願い事を
新年を迎える5分前、ロシア国民に向けて大統領が祝福のメッセージを送る。この伝統は1976年にレオニード・ブレジネフ(ソ連共産党書記長)が始めたものだ。メッセージが終わるとクレムリンのスパスカヤ塔の鐘が鳴り始める。この瞬間、シャンパンがグラスに注がれ、乾杯でグラスを鳴らし、お互いを祝福する。ちなみに去り行く年の最後の数秒にした願い事は来る年に必ず叶うと言われている。そのためには鐘が鳴っている間に願い事を紙に書き、それを燃やし、灰をシャンパングラスに入れ、鐘が鳴り終わるまでに飲み干さなければならなない。
祝いの楽しみは屋外でも続けられることが多い。ロシア人は雪だるまを作ったり、花火を打ち上げる。ソリ遊びをしたり、凍った坂を滑ることもある。冬の遊びはとてもロシア的だ。