アロン氏によれば、今日の大衆ファッション産業では、高速かつ安価な生産ブームの中で、毎年1000億点以上の衣服が生み出されている。これは、世界人口でみると、一人当たり毎年14着の新しい服を手に入れることが可能な計算になる。また、この衣服の量は、2000年に製造された衣服の2倍に相当する。しかし、サイズが合わなかったり、気に入らないものは返品できるため、これらの新しい服はかなりの割合で捨てられる可能性が高くなる。その結果、毎年約1億100万トンの衣類が埋め立て地に運ばれている。
英国の環境問題に取り組む組織「エレン・マッカーサー財団」の報告書によると、ファッションブランドは「環境に優しい」衣服だと謳っているにもかかわらず、返品や売れ残った衣類がリサイクルされるのは1%にも満たないという。それに比べ、プラスチックゴミは約9%、段ボールは約70%がリサイクルされている。アロン氏によると、「ファストファッション」ブランドは衣服のリサイクルを十分に行っていない。また、最近は衣料品の製造が非常に安価になったため、企業が古着のリサイクルを目指して高度な技術開発に多くの資金を投じることは、経済的に不利益を被ることになる。
その一方で、アロン氏は、古着のリサイクルで発生する問題も無視できないと指摘している。 現在、衣料品製造は産業界で使用される水の約10%を消費しており、世界の排水量の20%に相当する。そして、この排水の大部分は毒性が強く、処理したり再利用したりすることができない。そのため、同氏はメーカーに対して、すべての衣料品の寿命を延ばすよう要請している。綿のシャツは平均6カ月、ウールの靴下は5年ほどで分解されるが、合成素材は数世紀かかるため、合成素材をできるだけ天然素材に置き換えるべきだという。
衣料品メーカーが環境負荷を抑えるもう一つの方法は、返品を減らすこと。そのためには、実際に試着して自分に合った商品を見つけてから購入を決めることができる従来のショップを積極的に活用することにあるという。また、衣料品メーカーは廃棄物に関する情報を隠さず、より透明性の高いサステナビリティの実践を示すべきだと、アロン氏は指摘している。メーカーは、不要になった衣料品をリサイクルするための費用対効果の高い方法を見つける必要がある。また、同氏は消費者に対し、廃棄する衣服の量を減らすようにし、長く愛用できる天然素材の服を購入することを勧めている。
スプートニクは以前、米国の研究者らがポリエチレンをリサイクルして医薬品を製造する技術を開発したニュースについて報じた。
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