【視点】韓国の核兵器 危険な機運か「国家免疫」の防御反応か

聯合ニュースは、世論調査の結果を基に、韓国の国民の70%以上が自国の核兵器製造の開発を支持していると伝えている。韓国でこうした機運が広まっている理由とはなんなのか、「スプートニク」が分析した。
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新たな動きではなく、傾向である

中国・現代アジア研究所朝鮮研究センターの研究員、アレクサンドル・ジェビン氏は、韓国人が核兵器と「隣り合っても良い」とするような機運は、予期せぬものではないと指摘している。ギャラップ社が10年前に世論調査を実施した段階ですでに、(北朝鮮の3回目の核実験を受けて)64%の国民が韓国の核兵器製造を支持していた。
以来、この数字は減少したが、大きく減少したわけではなく、2016年に58%、2017年には60%であった。
ジェビン氏は、韓国の尹錫悦大統領は、選挙前から、米国製の核兵器を国内に配備することを歓迎していたと指摘し、いわゆる戦略的資産は、本質として核であると述べている。

しかも、韓国人のこうした考えは事実上、かなり以前から形成されてきた傾向である。ただそれがここ数年、強まってきている。その主な原因は、韓国が北朝鮮から攻撃を受けた場合に、米国が韓国を防衛してくれないかもしれないという懸念である。世論調査では、51.3%の回答者が、朝鮮半島において予期せぬ状況となった場合、実際、米国は韓国を防衛するために拡大した抑止力を発揮してくれると信じている。

脅威は明白だが、防衛してもらえるかは疑わしい

一方で韓国人の多く(およそ80%)が北朝鮮の非核化は不可能だと考えていることが分かっている。そこで大部分の国民(76.6%)が韓国は自力で北朝鮮に対抗する必要があり、韓国にはその能力がある(72.4%)と考えている。
韓国は、北朝鮮からの攻撃の脅威を最小化する方法は、核兵器の保有しかないと考えているのだとアレクサンドル・ジェビン氏は指摘している。

「というのも、事実上、そのような攻撃があれば、それは米国との戦闘と見做されます。なぜなら、韓国領内には米軍基地があるからです。そしてこの場合、米国からの報復により、北朝鮮には殲滅されるリスクは避けられません。しかし、核紛争の行方は予測不可能です。そこで韓国の人々は、米国が韓国のために、自国の安全(北朝鮮は米ロサンジェルスを攻撃する可能性がある)を危険に晒すことはないのではないかと懸念しています。そして自国の核兵器を開発・保有することについて深刻に考え始めているのです。しかも、韓国は1970年代にも核兵器製造構想を推し進めていたのですから」。

しかし、これを米国の承認なしに実現することはできない。米国は今のところこれに反対の立場を示している。
世宗研究所北韓研究所の鄭成長所長は、これについてジェビン氏の意見に同意する。
「北朝鮮の核兵器は韓国の軍事境界線の近くに位置していますが、米国の核兵器は遠く離れたところにあります。北朝鮮、中国、ロシアは核兵器を保有していますが、韓国、米国、日本の中で核兵器を持っているのは米国だけです。しかも、中国の核弾頭の在庫数は、2035年までに4倍に増加し、その数は1500発程度になるのです。もちろん、それでも核弾頭の数は米国やロシアのレベルにははるか及びませんが、時とともに、北東アジアのゲームは韓国、米国、日本ではなく、北朝鮮、中国、ロシアに有利に傾き始めています」。

同盟国たちの「戦略的反乱」

ホワイトハウスは、(米韓日の間には強力な同盟関係があるにもかかわらず)これらの国々の市民や政治家の一部は、自国領内に米軍を配備することからかなり疲弊している。
鄭成長所長はまた、その国々は、米国による同盟国の内政への干渉、またときに見られる米国側による直接的な指図にも疲弊していると付け加えている。
「そこで米国は、もし日本と韓国が独自の核兵器を保有すれば、ある日突然、米国人に『出ていけ』と言うかもしれないと恐れているのです。自分たちの国の安全は自分たちで保障することができるからという根拠に基づいて、です。そうなれば、韓国と日本に駐留する米軍基地の撤退は、この地域における中国やロシアへの米国の武力による圧力を含めたアジアにおける米国の政策への強力な打撃となります。一方で、『前線配備政策』では、アジア太平洋地域における、中国とロシアの国境に沿った米軍基地の維持が検討されています」。
しかしいずれにせよ、ホワイトハウスが韓国や日本領内への核兵器配備を決定する可能性は除外できない。ただし、自国(米国)の安全保障へのリスクを最小限にして、である。

冷笑主義的計算

ジェビン氏は、これには(米国側の)かなり利己的な理由があると指摘する。

「米国は(中国とロシアを抑止するための)軍事行動を米軍兵士ではなく、日本と韓国で行わせることを想定しています。つまり米国はそこに核兵器を配備することによって、韓国と日本に、両国はしっかりと防衛されている、そして戦争は台湾海峡など、両国の領土外で行われることになるのだと説得しつつ、これらの国をただ危険なアバンチュールに『向かわせている』にすぎないのです。一方で、米国は、アジアの同盟国を中国との「核戦争の中に」放り込むことも十分あり得ます。その相手はロシア(極東)かもしれません。しかし他方で、米国は、もしも韓国と日本が独自の核兵器を持てば、同盟国に対するコントロールを失い、またこの地域での米軍基地をも失うことになると恐れています。」

もし日本と韓国が突如、コントロール不能となり、米国の「傘下」から抜け出した場合、米国と中国の対立はまったく予期せぬシナリオに沿って進んでいく可能性があるとジェビン氏は締めくくっている。

人員が全てを決める

そんな中、米国はこの数十年にわたって、これらの国々で親米的政治家を育てるために少なからぬ努力をしてきた。ジェビン氏は言う。

「韓国と日本のほぼすべての政治家(特に防衛機関の上層部)は米国の大学や軍事アカデミーで学んでいます。そして、これらの国の軍(自衛隊)は主に米国の武器や軍備で装備されています。しかも、韓国軍は事実上、韓国に駐留する米軍を統括する司令官の管理下に置かれています」。

そんな中、NATO(北大西洋条約機構)のイェンス・ストルテンベルク事務総長は、今週、韓国を訪れ、韓国内に核兵器が配備される可能性について言及した。

傘はあるが他人の傘で明確な保障はない

韓国が米国との核兵器の共同使用に関する合意を達成する意味があるかどうかという疑問に対し、ストルテンベルク氏は次のように答えている。

「米国の兵器のおかげで、NATO諸国および韓国など核兵器を持たないいくつかのNATOのパートナー諸国で幅広い抑止が働いていることを理解しなければならない。そしてこれは核兵器の拡散を防ぐのを可能にするものなのである」。

従って、ストルテンベルク事務総長は、同盟国には(中国、ロシア、北朝鮮の行動のせいで)米国の核の傘が必要だと考えている。しかし、日本や韓国がこのような「傘」を自分で作ることは許されるのだろうか?おそらくこの疑問は、韓国と日本にとって、まだまだこの先もずっと解答のないものになるだろう。しかし、(最近の世論調査で)63.5%もの韓国国民が、自国の核兵器開発の可能性を信じ、日本も核兵器を持つようになると答えている。
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